5.無知って怖い
「ん……」
「よかった!目が覚めた!」
そうか、意識飛んでたのか。
あれ?肩と足の痛みがさっきに比べて弱くなった様な。
「心配したんだから!私が治癒魔法かけなかったら死んでたかもしれないんだから!」
なるほど、治癒魔法をかけてくれたのか。
どおりで痛みも軽減したし血も止まってる訳だ。
「ありがとう、フェイ助かった」
「お願いだから私を一人にしないでよ」
「ごめんな」
怪我もなんとかなったしどうするか。
今はさっき食べたばかりでお腹は空いていないけど、後々必要になるよな。
水と食料……まずはこの2つが先決だな。
「フェイは食べられる物とか毒のある物とかを見分ける事出来る?」
「私は魔力が食べ物だから人間達の食べる物に関しては分かんない」
「そうか」
せめて食べられるかどうか飲めるかどうかだけでも分かったら助かったのにな。
んー、何かいい方法は……誰かに聞くにも知り合いなんていないしな。
「はぁ、鑑定とかあったらな」
やっぱり異世界と言ったら鑑定とかステータスがあるのがテンプレなんだよな。
やってみる価値はあるか……といっても調べたい物がないんだよな。
「フェイ少しでいいからじっとしててくれる?」
「え?……いいよ?」
「ガシッ!」
両方の人差し指でフェイの頬をガシッとホールドする。
あれ、よく見るとフェイってかわいいな。
いかんいかん、今は試さねば。
「鑑定」
「にゃに?にょうひたにょ?」
…………何も出ない。
鑑定がダメなら、ステータスとかか?
「ステータス」
「……ひゃにひっへるの?」
……これも出ない。
ダメだわ、これ無理なやつだわ。
ウンともスンとも言わないぞこれ、困ったな
これじゃ食料とか無理じゃね?
「ひょろひょろはなひてよ」
「すまんすまん、でも改めて見るとフェイはかわいいよな」
「ほ、ほ、褒めても何も出ないわよ!」
照れてる照れてる、まんざらでもなさそうだな。
意外とチョロいなフェイは。
「でもフェイがいてくれて良かったよ、火を使うことで夜の寒さをしのぐことが出来るし生の食べ物とかを焼くことが出来るからな」
「本当どうしたの?知り合ったばかりの私が言うのもなんだけど変だよ?」
「いや、本当の事を言ったまでだし火は人にとって欠かせない物だろ」
火があると凄く便利だからな、あれ?どうして顔を隠してるんだフェイは。
指の間からチラチラ覗いてるけど何かあったのか?
そんな事をしている内にそろそろ日が沈みそうだった。
地面で寝るのはいいけど何があるか分からないからな、今日は寝床探しでもするか。
「よし、今日は寝床探しするぞフェイ」
「私はクルーシュの上で寝れば困らないけどね」
「俺の上で寝るのかよ、あぁそうだ俺の事はクルーシュじゃなくてユーマと呼んでくれ、やっぱりユーマの方がしっくりくる」
「クル……ゆーま、ゆーま覚えた!」
じゃあ早速行きますか、見つけるのは夜になりそうだけど頑張るしかないな。
こうしてユーマとフェイは魔物の出る森の奥へと足を進めていく。
◆◆◆◆
「なんでフェイが疲れてるんだよ、飛んでるのに」
「飛ぶのも羽使うから疲れちゃうの!」
「俺の肩にでも乗ればいいのに」
あれ、固まっちゃったけど大丈夫か?俺なんか変なこと言ったっけ?いや、言ってない。
少なくとも言ったことは的を射ている筈だ。
「ゆーまって天才?」
「いやフェイが頭弱いだけだろ」
その後ブーブー文句を言っていたがすぐに俺の肩に座りに来た。
本当かわいいやつめ。
それにしてもだだっ広いなこの森、どこまで続いてるんだ?
やたらと木は生い茂ってるし、夜で暗いし。
まぁフェイが火魔法で周囲を明るく照らしてくれてるから問題ないけどさ。
悪い事だらけで嫌になるけど一つだけ良かった事がある。
それは、虫がいない事。
フェイに虫の事を聞いてみたがどうやらこの世界には虫がいないらしい。
素晴らしいね、初めて異世界が良い所って思ったかも。
「おっ、あれは川か?」
探索することおよそ一時間、俺はようやく寝床に出来そうな所を見つけた。
そろそろ疲れてきたし寝床にするにせよしないにせよちょっと休憩するか。
「ふぅ、喉乾いたな……でも飲めんのかこれ」
目の前には少し小さめの川が流れていた。
ここから見る限り透き通っていて飲んでも大丈夫そうだ、でも——何が入ってるか分からないんだよな。
まず異世界の川だし——無知って怖いな。
「ぷはぁ、おいしい」
「……フェイ?今、川の水飲んだよね?」
「喉乾いたもん」
うん、無知って怖い。