3.初めての魔法
「——という訳なの」
「なるほど」
精霊契約が終わり暇を持て余していた俺は、
フェイに精霊について教えて貰っていた。
まず、この世界では火属性の魔法が忌み嫌われているらしい。なぜなら、1000年程前に精霊戦争という名の100年も続く戦争が起き、その戦争で、火の精霊を率いる大精霊だけが命を落とし他の火属性を持つ精霊達はイフリートの加護を失ったそうだ。
精霊戦争は、各属性の大精霊達が和解という手段で事なきを得たらしいが、火の大精霊だけが命を落としていたため火の精霊達は他の属性の精霊達に隷属する事になったそうだ。
そして、次第に火の精霊は少なくなり今はフェイを含めた十数人が火を司る精霊らしい。
「ご、ごめんね?本当なら契約の前に言わなきゃいけない事なんだけど……」
「いや?別に?どうせ暇だったし良い暇つぶしになったよ」
「暇つぶし⁉︎」
精霊でも話し相手は話し相手だからなぁ。
父さんと母さんがいない間は退屈しなくて済みそうだ。
そうだ、精霊契約するとどんな事があるのか聞いてなかったな。
まだ帰ってこないだろうし聞いてみよ。
「フェイ?精霊契約のメリットとデメリットを教えてくれる?」
「そうね……まず契約した精霊の司る属性の魔法適正値が上がるの、そして他の属性の魔法適正値が少し下がる」
なるほど、適正値くらいなら全然問題ないな。
「他には?」
「精霊魔法が使えるようになって……あと、私の場合だと周囲に火に関係するものがあったらそのマナを借りて自分の魔力に変換できる」
そりゃ凄いな、周りに火があれば吸いとれるのか——なかなか使えそうだな。
「精霊魔法はどういうものなの?」
「それは……私、契約した事無いから分かんない」
「なるほど」
大分メリットの方が多いな、もうちょっとデメリットあるかと思ってたけど。
まぁ、メリットが多いに越した事は無いな。
「他に何か聞きたい事はある?」
「んー」
知りたい事はあるけど、別に慌てて聞く事でも無いしな。
とりあえず魔法とかそういう事について知りたいかな?俺にも魔力?はあるようだし。
「魔法ってどうやったら使える?」
「えぇと、イメージが大事よ!」
「イメージ⁉︎それだけ⁉︎」
「いいからやってみなさい!」
投げやりすぎるでしょ……やってみるけど。
イメージ……火のイメージ……手から火が出るイメージ。
あっ、なんかいけそう。
「おりゃ!」
「ボッ!」
俺の手のひらからは野球ボールぐらいの火の玉が飛び出した。
おぉぉぉ!魔法使えたよこれ!
適当にイメージとか言ってるのかと思ってたけどちゃんと考えてたんですねフェイさん!
「へ、嘘……」
あれ?口が開いたまま塞がってませんけど大丈夫ですかフェイさん?
イメージが大事なんだよね?イメージだよね?
「もう一度聞くけどあなた本当に人間?」
「えっ?人間だから!割とマジで傷つくよそれ」
「人間の子供がこんなにスラスラ喋って、魔法も使って……頭痛くなってきた」
そんなに珍しいもんなんかね、3歳くらいで
話す奴はいないと思うけどさ。
そこは追々話すということで。
「魔法も使えたし今日はもういいかな?そろそろフェイも帰るだろ?」
「何言ってるの?精霊契約したんだから私もここに住むよ?あなたと私一心同体だから」
「ふむふむなるほど、じゃあまたあと……今なんて言った?なんか一心同体とかここに住むとかいう幻聴が聞こえたきがするんだけど」
「一緒にここに住む」
おいおいおい、この精霊さん俺の家に住むとか言っちゃってますよ?どういうことですか?えぇ?契約したからパートナー的な感じは分かるけどいきなり家に住むってどゆこと?俺の事信用しすぎじゃありませんかね?
「あぁ、ご飯はいらないからね?あなたの魔力を少し貰うだけで大丈夫だから」
「いや、問題点はそこじゃねぇし俺の魔力貰うなし……もういいや、諦めた自由にしてくれ」
「じゃあ早速いただきます」
「へ?」
フェイは俺の手のひらに乗って俺の指を咥えてチュパチュパしだした。
何やってるんですか?この世界の精霊は特殊なプレイがお好きなんですか?そうですか。
「ぷはぁ……あなたの魔力最高」
「今食事してたのか?俺の魔力を」
「こんなに純度の高い透き通った魔力初めて超おいしい」
魔力にまずいとかおいしいとかあるのか。
そろそろ父さん達が帰ってきそうだな。
父さん達には見えないらしいからフェイと話すときは周りを警戒しないとな。
独り言とか恥ずかしいし。
「フェイ?そろそろ親が帰ってくるから静かにしてるんだぞ?言っとくけど親の前では3歳児だからな?笑うなよ?あとうるさくするなよ?」
「笑わずに静かにすればいいのね?」
「そうそう」
よし、フェイは大人しくしてくれるようだし大丈夫かな?
あっ、火消すの忘れてた。どうやって消そうか。
「じゃあここの火は食べちゃうね?えいっ、
パクッ」
事件解決、そういえば今気づいたけど燃え移ったりしないんだな。
まだ魔法の事何にも知らないからそういう事にしておこう。
「ただいまぁ〜〜‼︎クルーシュ!元気にしてたぁ〜〜?」
下から母さんの声が聞こえてくる……切り替えていくぜ。
俺は3歳児俺は3歳児俺は3歳児俺は3歳児。
「なにブツブツ言ってるの?」
やべ、口に出てた。