表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/43

8「猫殺しの罪」

「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」


 なあ。


「はい?」


 俺の挨拶でぷつ切りにしてるのわざとだろ。


「いえ、自然とそうなってるだけですよ」


 本当かあ。


「本当です。さあ、描写の続きを」


 まあいいや。

 で、前回は確か、アダムが猫に嫉妬したシーンからだったよな。

 その後のことを描写してみるか。





 ――アダム視点。


 私は夜。こっそりと外へ出た。

 もちろん、あの猫を連れ出してだ。

 幸い猫はこちらに敵意がないおかげで上手く連れ出すことができた。


「んにゃああおおおお!!」


 私は猫の首を思いっきり締めた。

 猫は苦しそうに声を上げる。しかし、ここは外。寝室で寝ているイブにその声が届くわけがない。


 猫は苦しみもがいた後、ぐったりとした。

 死んだのだ。

 よし、これで邪魔者は減った。

 イブは私のものだ。

 でも、何故だろう。何か虚しく感じる。


 その後、私は土を手で掘り、そこに猫の死体を埋めた。

 私の手は土で染まっていた。





 どうよ。この展開。この終わり方。


「何か詩的でいいですね」


 だろ。私の手は土で染まっていたっていう部分に何かジーンと来るよな!


「さて、アダム様、次へ」


 せっかちだなあ。言われなくても進めるよ。

 そうだなあ。そういえば俺が作った部屋にまだ水道がないんだよなあ。

 アダムの汚れた手を洗い落とす必要があるから水道を設置するか。


 水道は東側の扉の内側の右側に設置しておこう。

 さて、話を進めるか。





 ――アダム視点。


 私は部屋の中に戻った。


「ん?」


 よくよく辺りを見回してみると私の視線から左側に水道があるのが見えた。

 ここから水が出るのか。丁度いい。

 汚れた手を洗いたかったところだ。


 私は手の全体から爪の先までについた土を綺麗に水で洗い落とした。

 そして、寝室に戻り、そのまま眠りについた。


 あの猫を殺してしまって本当に良かったのだろうか?

 私の中に少しばかりの罪悪感はあったが、そのことはなるべく考えないようにしておいた。





 こんな感じで終わらせてみた。


「ドロッドロですね」


 だろう。土だけにドロッドロだな。


「……次へ進みましょう」


 滑ったし、まあいいか。

 ってかそのまま進めていいのか?


「そうですね。読者の中にはまだイメージ出来てない人もいるかもしれません。今現在の状況を説明したほうがいいですね」


 そうだなあ。俺が苦手な情景描写だが、説明してみるか。

 今現在この建物には3つの部屋があり、2階建てになっている。

 1階の東側の扉を開けると、外に出る仕組みになっており、辺り一面リンゴの木があり、リンゴの実がなっている。そこの周りは3メートル以上の高さを持つ壁があり、そこから外には行けないようになっている。要は庭みたいなものだな。


 さて、部屋の中の描写をしよう。外から中に入ってみれば俺が最初に作った部屋がある。東側の部屋から入った視点から左側には水道が設置されており、そこで手を洗うことが出来る。そしてその部屋の北側にはうさぎFUCKといったような俺が描いた絵がある。2階にはアダムが青いクレヨンで染めた普通の部屋があるぐらい。そして、1階の西側の扉を開けると寝室になっている。上手く説明出来ないが、なるべく綺麗に作ったつもりだ。窓もあるしな。


 で、現在起こった状況だが、アダムという人物はイブが猫に奪われるんじゃないかと思い、その猫に嫉妬し、その猫を殺して、土を掘ってその猫を埋めて、土だらけの手を水道で綺麗に洗い、寝室に戻って寝た。という展開にまで発展してるところかな。


 だいたいこんな感じだな。

 これで読者に伝わるだろうか?


「そうですねえ。ここから読んだ読者にはだいたい伝わる内容にはなっているんじゃないでしょうか」


 ちなみに、作ったばかりだから、アダムやイブは服は着ていない。

 俺は神だから服を着せようと思えば着せれるが、あまり手を出しすぎると読者としては面白くないだろう。読者は人間自身が生み出すストーリーが見たいはずだから、それが出来るような配慮が必要だということだな。


「分かってるじゃないですか」


 うん。分かってる。だけどそれを描写するのがまた難しいんだよなあ。

 まず、俺の描写は不自然すぎる。


 例えば、水道を設置したわけだが、その水がどこから来るかは分からないわけだし。

 神の御技だと説明すれば強引にでも納得させられるわけだが、それだと面白味に欠けるんだよなあ。

 

「勉強が必要ですね」


 これでもいろいろ小説講座とか読んだりしてるよ。でもプロットとかわけわかめだし、俺は好きな時に好きなだけ書きたいだけだし。


「まあ、とりあえず書いてみればいいんじゃないですか?」


 そうだな。続けてみるよ。





 ――アダム視点。


 私たちは目を覚ました。

 朝だ。太陽の光が暖かい。


「あれ? 猫ちゃんは」


 イブが猫がいないことに気づく。


「ああ、猫なら消えちゃったよ」

「どうして?」

「あれだ。神様が消したんだよ」

「そんなあ。神様って酷いね」


 何とか上手く誤魔化した。

 これで私が猫を殺したことはバレないはずだ。





 もう2000文字か

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ