5「ウザイ司会者ラビット」
「さあ、やってまいりました第一回描写力コンテスト」
やっぱり2000文字丁度ってやめたほうが良くないか。
「このコンテストのルールですので、そこまで気になさるのなら、2000文字丁度でいいように終わらせるようにしてください」
無理ゲーだろ。
「出来るかもしれませんよ。世の中には200文字丁度で一つの小説にしている人たちが大勢いるのですから」
確かにそれはそうだが。
「まあ今は、それは気になさらずに、どんどん次へ進みましょう」
で、何だっけ? 二話目のタイトルは付け終わったんだよなあ。
「ですね。次は三話目です」
うーむ。”今日からお前の名前はアダムだ”というのはどうだろう?
「奇抜ですねえ」
悪いか?
「悪くはないんじゃないでしょうか」
随分曖昧な答えだな。
「司会者が神に余計な口出しをしてはなりませんので」
まあいいか、それじゃ次四話目。
そうだなあ。”クレヨン中毒”
「またまた奇抜、どうしてそんなタイトルに?」
いや、俺が作ったアダムがクレヨンに夢中だったから。
「まあいいでしょう。次は今回のタイトルですね」
”ウザイ司会者ラビット”
「……一応聞きましょう。理由は?」
ただ単にウザイから。
「…………」
さて、タイトル決めも終わったし、先に進むか。
「悲しくて涙が出ちゃいそう」
あれ? 俺が作ったアダムが何かぐったりしてるな。
「多分、腹が減ってるんでしょう」
ってかクレヨンの時もそうだけど、俺、そんな人間の体の仕組み作ったっけ。
「自然と作ったってことにしましょう」
おいおい、そんなんじゃ読者置いてけぼりだぞ。
「と言っても、今更、訂正は難しいでしょう。2000文字丁度ですし」
何か最初はお前が読者を気にかけてるのに次は俺が読者を気にかけちゃってるな。
「まあ、次へ進みましょう。読者のためにも」
何か腑に落ちないなあ。
まあいいか。
とりあえず俺は皿を作り、そこに一枚のパンを乗せて、アダムの目の前にそれを出現させた。
クレヨンとやらで壁一面を塗りつぶしていた私、完全ではないが、真っ白い部屋に色が付くようになった。少し嬉しい。
しかし、クレヨンは底をついてしまった。
そして、何だが、変な感覚に陥った。無性に何か食べたくなったのだ。
そう思った途端。目の前に何かが現れた。
そこには皿の上にパンが乗っていた。
腹が減った私は、パンを食べつつ、神に感謝した。
さて、これで少しは腹が満たるだろう。
「ですねえ」
ところで思ったんだが。
「どうしました?」
この登場人物の設定おかしくね?
「確かに少しおかしいですね」
クレヨンの使い方を分からず口に含むのに、パンを食べ物と分かって食べる。
これは矛盾としかいいようがない。
「敢えてギャグとして済ますのはどうでしょう?」
いいのか。それで。
「ギャグなら宇宙で散歩とか普通に出来ますし、大丈夫でしょう」
分かった。クレヨンの件はギャグで片付けておこう。
ってちょっと待てよ。
パンを食べ終わった。目の前には皿がひと皿残っている。
美味しそう。いただきまーす。
「おい」
皿を食べようとした途端、またあの声がした。
「これは食べ物ではない。没収」
その声が聞こえた途端。目の前の皿が消えてしまった。
うううう、もっと食べたいのにぃ。
やはりこいつは馬鹿だ。
「ですねえ」
全く、こいつを作った人の顔が見てみたいぜ。
「ブッ」
何だ?
「いえ、何にも」
さて、次はどう進めるか。
今の状況を説明してみよう。
現在、高さ2m横幅2mの正方形状の部屋が二階建てになっており、一階目の部屋には俺が書いた「うさぎFUCK YOU」という絵があり、二階にはある程度青のクレヨンで色塗られた部屋に一人の人物がいる。
ちなみに名前からして、男という設定だ。
一から作ったっていうことで、服装は全裸ってことでいいか。
さて、何もない空間に一人だけというのは寂しいからもう一人、人物を作りたいわけだが、腹が減る以上もちろん、性欲もあるという設定だ。なので性別は女ということにしておこう。
神である以上。たくさんの人物を作ることは出来るが、それだと物語状、面白くない。ということで、この二人に子孫繁栄してもらうというわけだ。
俺は早速女を作り、一階に配置した。
これから場面転換するが、念の為に付け加えておくと、次の視点はもちろん”アダム”という人物だ。
ってか、ラビット、気になったことがあるんだが。
「何でしょうか?」
これから人数が増えるじゃん。
「はい」
その時に○○視点といった内容を付け加える必要があるだろうか?
「確かにそれが、問題ですね。小説講座の中にはそんな描写しなくても読者は分かるといった内容もありますけど」
念の為に付け加えたほうがいいか?
「そうですね。混乱を避けるために付け加えたほうがいいかもしれません」
では、そうさせてもらおう。
――アダム視点。
まただ。またあの感覚だ。
下の階に何かがある。そういった胸騒ぎがあった。
僕は早速二階から下へと下りていった。
そこには一人の女性が突っ立っていた