40「2000文字は大前提」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
どうだ! 前回描写力あっただろう!
「どこがですか?」
だって前回で途切れるぐらいの描写だったから。
「文字数が多ければ描写力があるとでも?」
じゃあ、何のための描写力コンテスト2000文字ルールなんだよ
「2000文字は大前提。それでいて面白い描写をするのが大事なのです」
別に前回の描写はつまらないわけではなかっただろ
「2000文字丁度で終わらせられてないのが悪いのでは?」
もうそのルールよくね?
「続けてください」
無視かよ。
――アダム視点。
ラッドとホープの押し問答が続く。
「どこが愚かだ。僕が神になって幸福な世界を作ることは理屈に適っている」
「初めはそうなのかもしれない。だが貴様も所詮人間だ」
「何が言いたい?」
「最初は幸福な世界を見て満足するだろう。だが」
「だが?」
「人間の感情を持った以上、その世界にも飽きが来る」
「僕が飽きるというのか? 幸福な世界に?」
「飽きる」
「なぜ、そう断言が出来るんだ!?」
「貴様が人間だからだ」
しばらく、沈黙が続いた。
「君の言ってることが分からない」
「神の神聖なる言葉をちっぽけな人間に理解出来るわけがない」
「じゃあ、何だ。今の神は人間以上の感情を持っていると言いたいのか?」
「多少、人間臭さはあるが、摂理を捻じ曲げるような愚かなことはしていない」
「僕は何のために今まで頑張ってきたんだ」
そういうラッドの目には涙が溢れていた。
「神になることは出来ないが、幸福な世界を作ることは出来る」
「え?」
ホープのその言葉に衝撃を受けたのであろう。ラッドが俯いていた顔を上げる。
「人間として、この世界に貢献すればいいだけの話だ」
「それは考えたさ! でも!!」
「貴様は焦りすぎなのだ」
「焦る?」
「貴様は自分一人だけが幸福な世界について考えてると思ってるようだが」
「…………」
「この世界を幸福にしたいと思っている人間ならたくさんいる」
「じゃあ、どうすれば?」
「そこから先は貴様ら人間の仕事だ。神の下僕である我が干渉する余地はない」
「……分かったよ」
ラッドは立ち上がるとこう言い放った。
「僕は僕なりにこの世界に貢献するよ。それでいいんだろ?」
「やっと分かってくれたか」
「最後に一つ聞いていいかな?」
「何だ?」
「この本は何のためにある?」
ラッドはそう言うと、本をホープの目の前に掲げた。
「それは貴様の想念体の塊。貴様がいらないと思えば自然と意味を持たなくなり消える」
「そういうことか。神の下僕は何でもお見通しなんだね」
ラッドは後ろに振り返り、そのまま歩き出した。
ホープに説得された様子だ。
今後、彼はこの世界を幸福にするために頑張るつもりなのだろう。
「アダム」
ホープが私のほうに振り返った。
「すいません!」
私は思わず謝った。彼の言うことを素直に聞いていれば命の危険を感じずに済んだのだ。
といっても彼に出会った時もその危険を感じていたが。
だって黒いローブって明らかに不審者じゃん。
「謝る必要はない」
「それで、イブに会えるんですよね!」
私の心の中は期待で溢れかえった。
しかし
「会えない」
ホープのその一言で期待は裏切られた。
「どうしてです?」
「貴様はあやつに殺される未来を選んだ。貴様はあやつに殺されたのだ」
ホープは意味の分からないことを言い出した。
私は生きてる。そうホープに言っても
「それは貴様が神にとって重要な存在というだけで、貴様が生きてるという意味ではない」
というまたもや難解な言葉を発した。
「それじゃあ、イブには二度と会えないんですか?」
一番したくない質問だった。
でもこれしか聞くことがなかった。
もうイブには会えない。
じゃあこれからどうすればいいのだろう?
「安心せよ。イブに二度と会えないわけではない」
その言葉を聞いた瞬間。私の中で希望が湧き出てきた。
「え? ってことはイブに会えるんですか」
「ああ、だが今は会うことは出来ない」
その回答でもいい。
イブに二度と会えないわけではないんだから。
「貴様には試練を乗り越えてもらえばならぬ」
試練?
またホープは意味の分からないことを言い出した。
まあ自分のことを神の下僕だと言うわけだし、当然といっちゃ当然か。
「本来ならば、あそこの選択で間違えていなければ今頃イブに出会えていたわけだが」
ホープは皮肉めいたことを言い出す。
まあいい。それで新しい試練が発生して、それを乗り越えればイブに会うことが出来るんだろう。
イブに会えるというだけで何倍も元気になれる。
試練なんてどんと来いだ。
「貴様には新しい世界へ行ってもらう」
「そこで何をすれば?」
「そこから先のことは別のものが教えてくれよう。この石に触れるがいい」
ホープが石を取り出した。
その石はとても綺麗に輝いていた。
今までに見たことがないほど綺麗に輝いていた。
私はその石に触れた。その瞬間。
私の意識が遠のいた。
ラビット。挨拶。
「皆様、また次回もよろしくお願いします」
完璧だぜ。




