4「クレヨン中毒」
「さて、やってまいりました第一回描写力コンテスト!」
いつもそこから始まるのな。
「お約束ですので」
そんな約束ない気がするが。
「そういえば、前の回の最後に何か言いたげでしたね。何でしょうか?」
だから、わざわざ2000文字で区切らなくても、きちんと終わらせるためにその前後でいいんじゃね? っていう話だよ。
「なるほど。的を得ています。急に終わられちゃ読者も困るでしょう」
だろ。
「ですが、このコンテストのルールとしては2000文字丁度で終わることなのです」
いいのかそれで。
「読者の皆様も理解してくれるでしょう」
お前も読者に冷たいんだな。
「さて、描写の続きをしてみてください」
無視されたし、まあいいか。
確か前は、クレヨンを置くところだったな。
俺はもう一度のアダムという人物の前にクレヨンを置いてみた。
さすがに次はもう食べないだろう。
私の目の前に突然、またあの青いものが置いてあった。
「何だ? これを食べるのが今の私のやるべきことなのか?」
もしかしたらこれを食べ続ければ何かいい手がかりが見つかるかもしれない。
私は、その青いものを再び口に入れた。
こいつには学習能力というものがないのだろうか。
「まあ、そう上手くは進みませんよね」
こいつに自分の名前を付けたのが恥ずかしいわ。
「とりあえず、先に進まないといけません。次の描写を」
ああ、やってみるよ。
目の前にまた、青いものが置かれていた。
これを食べるのが私の使命。しかし、これは美味しくないどころか、食べると気分が悪くなり吐き出してしまう。
それでも食べなければならないのだろうか。
「おい」
突然、声がした。
「この青いものはクレヨンと言ってな、絵を描くためにあるんだよ」
絵を描く。
一体何のことだろうか?
「そんなことも分からんのか、分かった。実例を見せてやるよ」
その声が聞こえた途端。クレヨンと言った青いものは宙に浮かび、壁をなぞらえて進んでいった。
すると、何と、壁に青い色が描かれたのだった。
「こうやって使うんだよ。分かったか?」
分かりました。ありがとうございます。と私は心の中でその言葉にお礼を申し上げた。
しかし、私の耳に聞こえるあの声は一体何だろう?
その正体が分からない。
ふう。
「お疲れ様です」
神の手を煩わせるとは、出来損ないにもほどがある。
「その出来損ないを作ったのは貴方ですがね」
うるせいやい。
さて、アダムという人物にクレヨンの使い方を教えたところで、次にその人物がどういうアクションに出るのか観察してみた。アダムはクレヨンを持った後、しばらく何か考え事をした後で、そのクレヨンを壁に押し付け、なぞらえるようにクレヨンを動かし始めた。
やっと使い方が分かったようだな。
アダムはそれが面白いのか、バランスボールはそっちのけでずっと青いクレヨンを壁に押し続けていた。
辺り一面真っ白な部屋が少しずつ青に染まり始めた。
「いい感じですね」
だな。
アダムはクレヨンの使い方を正しく知り、それを正しく実行している。それも自由意思で。
いやあ、俺が作った人間が自分で行動を起こし、俺の目を楽しませるのは実に気分がいい。
「さて、アダム様」
どうした? ラビット。
「現在四話目まで来ていますよね」
ああ、そうだが。
「タイトルを考えましょう」
タイトル?
「ええ、1話ごとのタイトルです」
また、めんどくさそうなものを。
「アニメにもあるでしょ? 第何話。ほにゃららって」
確かにあるが。
「それを考えるのも書籍化への第一歩ですよ」
それで? この回のタイトルはなんて付ければいいんだ。
「何か忘れてません?」
何が?
「まだ一話目にもタイトルつけてないじゃないですか」
な!?
「まずは一話目のタイトルですねえ」
めんどくせええええ!! 一話からこの四話にまでタイトルを付けなくちゃいけないのか。
「そんな態度じゃ読者に嫌われますよ」
分かったよ。付ければいいんだろ。
「ではまず一話目から、どんなタイトルがいいか考えてください」
うーむ、一話目だし、始まりだとか誕生とかでいいんじゃない?
「まあ正攻法と言ったところでしょうか」
何? それでいいの?
「神が決めることに司会者は逆らえないので」
何かアドバイスくれよおおお。
「自分で考えてください!」
分かったよ。一話目は俺が神に選ばれたことを含めて、”描写神の誕生”でいいか。
「ブッ」
何がおかしい。
「いや、その酷い描写力で描写神は言い過ぎかと」
馬鹿にしてるのか?
「事実です」
分かったよ。適当に”神の誕生”でいいよな。
「一話目ならそれでいいんじゃないでしょうか」
で、二話目からはどうするんだ?
「それは二話の内容を見て、これが相応しいといったタイトルがよろしいんじゃないでしょうか?」
相応しいタイトルねえ。
”2000文字丁度とか無理ゲー”ってのはどうだろう?
「ある意味、的を得たタイトルですね。悪くはないと思いますよ」
いいんかい。結構適当だが。
「奇抜なタイトルのほうが読者さんは惹かれるんです」
じゃあ二