35「そのほうが読者受けがいいんだよ」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
やっぱ見切り発車だと続きを書くのに苦労するなあ。
「当然です!!」
10万文字は頑張れば達成出来そうだが、30万文字は難しいぞ。
「意地でも頑張ってください!」
分かったよ。頑張ってみるさあ。
――ラッド視点。
「ラッドさん」
朝。
眩しい太陽が宿屋を照らす中、ギルドへ向かおうとワープストーンを掲げる僕の背にアダムの声が聞こえた。
「どうした? アダム」
「ずっと宿屋で待機してるの飽きました」
「お金なら渡してあるはず。近くの商店街にでも行って」
「それに飽きたんです!」
困った。
アダムは神に辿り着くために必要な人材。
始末も僕が冒険者ランク1位になった後にとある場所で始末するように本には書かれている。
下手に動かれて死なれては僕の神殺しの計画もおじゃんだ。
しかし、どうしたものか……。
「私もギルドの依頼を受けに行きたいのですがよろしいですか?」
「ダメだ」
「安心してください。無理な依頼は受けないので」
うーむ。悩む。
アダムは冒険者への憧れに満ちた目をしていた。
そんなアダムを止めようとしても無駄だろう。
「そうだな。僕が依頼を選んで、その依頼をこなしてもらおう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
僕が簡単な依頼を任せれば、アダムが死ぬことは防ぐことが出来るだろう。
さて、僕は神殺しの計画を遂行するために、冒険者ランクを上げなければならない。
神を殺して僕が神になり、幸福な世界を作るのだ。
一日でも早く……。
描写終了。
「もう……ですか!?」
間間で会話挟んでおかないとやってられん。
「出来れば私たちの会話ではなく、ストーリーで30万文字を突破してもらいたいところ」
そうだなあ。
ちょっと語りたいことがある。
「なんでしょうか?」
俺の描写って浅いか?
「そうですね。浅いし、くどい感じも受けますね」
くどい? どこが?
「例えば、ラッドが神を殺したがっているのは読者は知ってるわけです」
うん。
「なのでわざわざ、数回も神を殺すだの書かなくてもいいんじゃないかと思います」
ちょい待ち。
「なんでしょうか?」
読者は最新話から読む傾向があるんだよな。
「見た感じそうですね」
ならくどい描写もありじゃね?
「どうしてそう思うんですか?」
全体的に見ればくどくても一話では一言しか述べていない。
それで最新話を読む読者にはくどくないように映るし、それに。
「それに?」
ただでさえ浅い描写の俺がくどさまで削ってしまうとさらに浅くなるというデフレスパイラルが起こるわけだ。
「それは他の描写力で補えばいいのでは?」
言うは安しだぞお。
「しかし、書籍化を狙うならそれが出来るようにならなければ!」
クソッ! 分かったよ! 努力はしてみるよ! はあ……。
「まずは2000文字を軽く書ける描写が出来るようになる努力ですね」
へい。
――アダム視点。
私たちはギルドへ寄った。
ラッドは数ある依頼から3つの依頼を私に提示した。
一つ目は草刈り、この中で一番簡単な依頼だと思う。
この街周辺の雑草を一通り刈り取る依頼だ。
二つ目は、代理募集の依頼。
どうやらしばらくその仕事に出られない人がいるのでその人の代わりを請け負う依頼だ。
三つ目はスライム狩り。
ボカル草原にいるスライムを狩る依頼だ。
僕は三つの依頼の中から一つの依頼を選んだ。それは。
「スライム狩り!」
あのスライムを潰した感触が忘れられない。
もはや快感ですらある。
待っててねスライムちゃん。今潰してあげるから。
「アダムってこんな性格でしたっけ?」
ん? 作った当初からそうだったよ? クレヨンを食べ物だと思うくらいだし。
あっ設定資料にいれる必要があるな。アダムはスライムを潰すのが快感っと。
「変な性癖ですね」
そういう性格なほうが読者受けはいいんだよ。
「そうなのかもしれませんが」
さて、続けるぞ。
――アダム視点。
スライムを狩ること5時間。私はギルドの報酬を得て、自分の宿屋に向かっていた。
いやあ、楽しかった。
こりゃ明日もスライム狩り決定だな。
宿屋につき、自分の部屋へ入ろうとした途端。誰かの気配を感じた。
気のせいだと思い、部屋の中に入った瞬間。
「アダム」
と呼ぶ変人がいたので宿屋の店主に通報した。
「あれ? この小説ってコメディでしたっけ?」
そのほうが読者受けがいいんだよ。
「何か真面目に書くの放棄してません?」
”一から作ってみる”というタイトルなんだから、どう書こうと自由だろ。
「自由すぎな気がします」
分かったよ。あと200文字切ったし、次回予告で締めるか。
スライム狩りを楽しんでいた。アダム。
宿屋に帰ったアダムが部屋を開けると、ある人物がいた。
その人物はアダムの名を知っていた。
そして、アダムにある取引を持ちかける。
終わり。
それじゃあラビット宣伝よろしく。
「こんな小説、恥ずかしくて宣伝する気になれません」
じゃあ、読者の皆、宣伝よろしくう。
「読者の皆様も今頃、苦笑いでしょうね」
まあ、気楽にやるんで気楽に読め。




