34「一から読むのも悪くはねえぞ」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
ラビット。前回の挨拶は雑だったな。
「それはアダム様の描写力のせいじゃないでしょうか?」
2000文字丁度とかまで描写力に含むなっつうの。
さて、これからどういったストーリーにしようか。
「少し盛り上がりを見せたコロシアムも終わりましたからね」
俺のあのコロシアムの盛り上がりが少しとはどういうことだよ!?
「貴方がその程度の描写力だったっていうことです。それより続きを」
クソッ! 絶対いい描写をしてやる!!
「その意気です!」
――アダム視点。
私はラッドに宿屋に待機するように言われたので、待機してるわけだが。
「…………暇だ」
ラッドは一日中ギルドの依頼をするつもりなのだろう。
その間、私はずっと宿屋で待たされるわけだ。
暇じゃないわけがない。
「アダム!」
何だ!? 突然頭の中に声がした。
神なのか?
それにしては声質が……。
「私はイブですよ」
イブ!?
私の知ってるイブは一人だけだ。
そのイブだというのか!?
「あの者から離れて!」
あの者というのはラッドのことだろうか?
「私の言葉をどうかき…………」
声がしなくなった。
一体どういうことだ!?
今、私は混乱している。
イブが私にテレパシーを送ったということなのか?
いや、ただの幻聴なのかもしれない。
だって言ってることが支離滅裂すぎる。
あの者がラッドと決まったわけでもないし……。
暇過ぎて幻聴まで聞くようになってしまったか。
さすがに何かしたほうが良さそうだな。
少し散歩にでも出かけるか。
私は宿屋を後にした。
描写終了。
「新たな展開ですね」
前も描写したと思うが、あの声は実はイブだったのだ!
「伏線回収といったところでしょうか。しかし、イブがテレパシーを送ったとするとそれを助ける人がいるというわけですね」
それを俺がやった。
「は?」
俺がやった。何だ? いけないのか?
「まあ貴方は神なので何をするかは貴方の自由ですが」
俺は俺で面白い展開を作ろうと思ってんのよ。
さて、あと1100文字も描写しないといけないのかあ。
多分、俺に描写力があればさっきの描写で1500文字は稼げてるはずだ。
「まあ、続きを描写してみてください」
あいよ。
――アダム視点。
街中にゲーセンがあったので私はそこで暇を潰していた。
ラッドから貰ったお金で遊び放題だ。
私はゲームで遊んでいる中でもあの声のことを思い出していた。
幻聴と片付けることも出来るわけだが、妙に気になる。
気にはなるわけだが、情報が少なすぎてどう動いていいか分からない。
そんなことを考えながら私は上の空でゲームをし続けていた。
――ラッド視点。
「はあ!」
僕はドラゴンを次々と討伐し続けていた。
初めは手こずっていたドラゴンも今では片手一つで軽く首を吹き飛ばせるほどになっている。
僕が今狩っているのはキングブラックドラゴンで1体15086ギルドポイントもするほど強力なモンスターだ。
報酬も300万Gと美味しい。
さて、これから僕がするべきことは。
冒険者ランク1位に上り詰めること。
これは難しくはない。あと数年もすれば1位の座も手に入ることだろう。
問題はその後だ。
アダムとイブを始末する必要がある。
そうすることで神へのゲートが開かれるわけだ。
アダムはもう確保している。
残るはイブのみ。
まあ、何かあればこの本が教えてくれることだろう。
しかし、僕には気にかかっていることがあった。
ホープだ。
僕はコロシアムに優勝していることになってはいたが、実際彼に勝ったわけではないのだ。
皆、僕が魔術で彼を消したと思っているが、彼が勝手に消えただけなのだ。
彼は僕に言った。お前に神は殺せないと。
もしかしたら、今後、彼が再び現れ、僕の邪魔をするかもしれない。
彼に勝つ力も手に入れなければ!
とりあえず、今は目の前の戦いに集中するのみだな。
描写終了。
「気になったんですが」
何だ?
「アダム達の現在地はベルカ国ヘルナン区ですよね?」
アダムはそうだがラッドは違う。
「どういうことですか?」
ワープストーンを買う描写を見なかったのか?
「なるほど! つまりラッドはワープストーンを使って別の街のギルドの依頼を受けてるわけですね!」
そういうこと。
どうだ。俺もちゃんと考えてるんだぞ。
「それをここではなく、物語で描写出来るようにしてください」
チッ、痛いところをつかれたな。
「ラッドの企みも描写されてますね」
これは描写しようか迷ったんだが2000文字も埋めるとなると描写せざる負えなくてな。
「まあいいんじゃないでしょうか」
さて、残り170文字程度、ラビット。綺麗な挨拶を150文字でよろしくう!
「むちゃぶりはやめてください」
それじゃあこの小説の宣伝をよろしくう!
「自分でしてください」
薄情なやつだな。
まああれだ。話別アクセス数を見ると最新話が多いわけだが一から読むのも悪くはねえぞ。
むしろこの小説の面白味は序盤にあると言っても過言ではない。
中盤は……まあ面白くなるよう努力するよ




