26「冷徹な瞳」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
俺、描写力あるんじゃね?
「どうしてそう思うんですか?」
だって最後、綺麗にお前の挨拶で終わらせてるじゃん。
「綺麗じゃないですよ」
なんで?
「だって”鍵カッコ”ないじゃないですか」
こまけえことはいいんだよ。
「さて、無駄話するより物語を続けてください」
せっかちだなあ。分かってんよ。
続けるぞ。
――アダム視点。
私はコロシアムの試合を見続けていた。
どの試合でも、皆手ごわく見えた。
これじゃいくら、96位のラッドでも……。
「第11試合目! ラッド・バットラー対クリス・ベルゲン!!」
ついにラッドの出番がやってきた。
生死がかかってるこの試合。ラッドにはぜひ勝って頂きたい。
しかし、ここまで見てきたが、どいつも強敵ばかりだ。
いくら96位のラッドとはいえ……。
「始め!!」
そうこう考えてるうちに試合が始まった。
「あれ?」
クリスという人物は試合が始まってるというのに一歩動くどころか何の動作もない。
ラッドはラッドで呑気に剣を片手にクリスのもとへ歩み寄る。
ラッドとクリスの距離は縮まった。
クリスは相変わらず動かない。
ラッドがクリスの首筋に剣を振りかざす。
「勝者! ラッド・バットラー!!」
何が起こった?
「何だ? 八百長か?」
「しかし、命をかけるほどとは」
観客達もあれこれと不満をぶちまける。
確かに今回の試合はおかしすぎる。
ラッドとクリスの間に何があった?
とりあえず、ラッドが無事に勝ち残ったことを喜ぼう。
今日の試合が終わった。
私たちは近くの宿屋に戻った。
「なあラッド」
「なんだい?」
私は今日の試合のことが気になって仕方が無かった。
なのでラッドに直接聞いてみた。
「ああ、それね」
ラッドはそう言うと、立ち上がり。私の目を見つめてきた。
「な!?」
身体が…………動かない!?
「単純さ。彼にストップを使った。今、君に使ってるようにね」
ストップ? 一体何のことだ?
「まあ魔術の一種といったところかな。使える人も限られているからあまり知られている魔術じゃないけどね」
私はラッドの恐ろしさを思い知ることになった。
ラッドのこの魔術と比べたら今まで戦ってきた人間の強さなんてゴミクズに等しい。
「まあ、面白味に欠けた試合だったのは確かだったね。次からはもっと盛り上げてみるよ」
私は96位を甘く見てたのかもしれない。
いや、ラッドは96位なのではない。その順位に甘んじているだけなのだ。
リゲンの言った通り、彼はいづれ大物の冒険者になる。
ラッドが神を殺す日もそう遠くはないのかもしれない。
アダムは知らねえなあ。神の恐ろしさを。
「何がですか?」
所詮、ラッドも俺の掌の上で踊る道化師にしか過ぎないってことだよ。
「ですが、読者としては神を殺す展開を待ち望んでいるところ」
ラッドみたいに盛り上げればいいんだろ?
「分かってるじゃないですか!」
しかし、ずっと2000文字を書き続けるのは結構難しいな。
「貴方の描写力不足なんじゃないですか?」
そうだなあ。確かに描写力が足りないのかもしれん。
例えば、ラッドはその美しい銀髪をかきあげてどうのこうのと言った細かい描写とかも必要だろうし。
「そうですね。次からそういった描写も意識してみてはどうでしょうか?」
まあ、考えてみるわ。
まだ文字数もあるし、続けるぞ。
――アダム視点。
「さあやってまいりました。第218回冒険者コロシアム二日目! ここからが盛り上がりどころです!!」
司会者のうるさい挨拶により、コロシアムの幕が上がった。
コロシアムが始まって二日目。
一日目は一回戦で終わり、生き残った残り半分の強者がまた戦いの舞台に姿を表す。
二回戦目の試合はどれも質が高かった。皆、豪華な魔術を使い。観客達を盛り上げた。
さて、肝心のラッドの対戦相手だが……。
「第六試合目! ラッド・バットラー対グリジャ・デーセント」
グリジャ・デーセント。
コロシアム一日目の25試合目で勝利した人物。
魔術、身体能力どちらも優れており、観客を魅了していた。
しかし、ラッドの勝利は目に見えていた。
いくら彼でもラッドのストップに勝てるようには見えない。
「始め!!」
ラッドとグリジャの戦いが始まった。
「何だ? どうした?」
観客達がざわめきだした。
それも当然だ。グリジャは試合開始早々。土下座したのだ。
そしてこう叫んだ。
「お願いだ! 命だけは勘弁を!!」
「おおっと! グリジャ選手。コロシアムでの御法度を犯してしまった! 参加した以上戦わなければ話にならない!」
そう。コロシアムのルールに降参はないのだ。
彼も参加している以上。それを知ってるはず。
それを知っていて、尚、命乞いをしているのだ。
ラッドがグリジャの元へ歩み寄る。
「お願いだ! ラッド様!!」
グリジャの命乞いは続く。
「君、面白くないよ」
ラッドはグリジャの首をはねた。
その時のラッドの目を私は忘れない。
冷徹で、そして容赦の無い。残酷な瞳を……。
「そろそろ終わりです。皆さん。また次で




