22「プチプチみたいに面白い」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
前回はお前の挨拶で綺麗に終わったな。
「いえ、鍵カッコが足りなかっので綺麗とは言えません。もっとちゃんと終われるよう努力をしてください」
あのなあ。2000文字丁度で綺麗に区切れる小説がこの世にあると思うか?
「200文字ならありますよ」
200文字は、だろ。2000文字はさすがにないだろ。
「まあでも、ある程度2000文字で綺麗に終わってるんじゃないですか?」
まあ、そうだけどよお。毎回2000文字綺麗に終わらせるって、簡単じゃないぜ。
「検索してみました。2000文字丁度で終わってる小説もあります」
マジかよ……。
「なので頑張ってください」
いやいやいやいや、他人のクオリティ俺に求めんといて。
「まあ、そんなことはどうでもいいとして、ストーリーの続きを描写しますか」
確かブルースライム討伐からか。
味気ない描写になりそうだがやってみるぜ。
――アダム視点。
ブルースライムの生息地。ミカル平原へとたどり着いた。
徒歩で約1時間ほどだ。
平原には予想通りスライムがうじゃうじゃいた。
うじゃうじゃと言っても、数えられるほどの数だ。
「えい!」
私は鞘に収まったままの剣の面でブルースライムを叩き潰した。
ブシャという音と共にブルースライムは潰れた。
私は次々とブルースライムを叩き潰し続けた。
何だろう? ブシャという音が癖になる。
これはハマる!
「……聞きたいことがあります」
何かね?
「描写はこれだけですか?」
ああ、いい描写だったろう。
「何がハマるんですかね?」
ほらっ、あれだ。プチプチってあるだろ。それを潰すのと同じ感覚だ。
「本当に味気ない描写でしたね」
別に悪くはないだろう。
「読者としてはこういうどうでもいい描写より先に進んで欲しいはずです」
でも、こういうどうでもいい描写が無いと30万文字とかいけんぞ。
「まあ、書くのは貴方の自由ですが……」
それじゃあ次、進めるぞお。
「はい」
――アダム視点。
辺りはもう夜だ。
ブルースライムを潰すのが面白すぎて、ついやりすぎてしまった。
「ん?」
剣の鞘が若干、破けてる気がする。
酸性の溶液が原因なのだろうか。
まあいい。帰ろう。
そういや気になるんだが。
「何でしょう?」
普通に考えて平原にスライムがいるっておかしくね?
「ですねえ」
でも俺からしたら”平原”イコール”スライム”なわけだ。ゲームの影響かね。
「まあその影響でしょうね」
そうだ。こういう設定にしよう。
「何ですか?」
平原の草にスライムを生成する成分が含まれてる何かが含まれてるってことにすれば
「設定を考えるのは結構ですが、あまり凝った設定にすると後で描写苦労するかもしれませんよ」
うーむ。確かにその通りだ。どうしたものか。
スライムはブルースライムだけじゃなくレッドスライムもいるわけだし……。
「まあこれからその描写が必要になるかは分かりませんから。あまり気にする必要もなさそうですが」
とりあえず、適当な設定でいってみるわ。
「貴方の描写力だとそれが賢明かもしれませんね」
何か馬鹿にされたようで無性に腹立つ。
まあいい。事実だしな。続けるか。
――アダム視点。
ギルドに戻ってきた。
ギルドにはリゲンがいた。
このおっさん、いつもここにいるのか。
ここを出るところを見たことがない。
何やらリゲンは誰かと話してるらしい。
その人物がリゲンにお辞儀をしてギルドから出て行った。
私はリゲンに話しかけた。
「さっきの人物は誰ですか?」
「ああ、ただの客じゃよ。わしはここでは有名な情報屋じゃからのう。それより早く依頼を完了させてこい」
私は言われた通り、依頼を完了させるべく、ギルドの受付嬢に話しかけた。
「あのう。スライム討伐し終わりました」
「冒険者カードはお持ちですか?」
「これですね」
私は冒険者カードをギルドの受付嬢に渡した。受付嬢は「少々お待ちください」といい、部屋の奥へと行った。
「ラッドの登場を望んでる読者がどれだけ多いことでしょう」
まあ待て、もう少し描写を続けさせてくれ。
「どうぞ」
――アダム視点。
受付嬢は私の冒険者カードを持ち、戻ってきた。
「討伐した。スライム数は88体なので88Gの報酬になります」
「報酬?」
「はい。スライム1体につき、1G稼げる計算になるので」
そうだ。依頼内容をよく見ることを忘れた。
まあ俺は依頼に興味があるわけであって、報酬には興味ないからな。
折角の報酬なんだ。有り難く受け取ろう。
冒険者カードが戻ってきた。
カードの内容が変わっている。
冒険者ナンバー109642。
アダム。
ギルドポイント88。
冒険者ランク61211位。
冒険者ランクが61521位から310位の61211位に上がった。
こうして、私は初めての依頼を終えることができた。
「描写お疲れ様です」
残り50文字程度だ。
「ではそろそろ終わりますね。読者の皆さん。また次もよろしくお願いしますね」
俺からもよろしく頼む。
おっ珍しく字余りだ。
もう終わり




