19「同じ恨み」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
やって来ちゃいました。コンテスト。
「前回はTOP100のラッド・バットラーを待つシーンで終わっていますが、今後どういう展開になるか見所です」
どう描写しようかなあ。
「描写頑張ってください」
その前にあらすじから始めてもいいか。
「ええ、構いませんよ」
俺に作られた最初の人間アダムはイブと出会い、そこで円満な夫婦生活を送る。ある日、神のお告げにより、大きな穴が空いた壁の奥へと進み、そこで見つけた開けてはいけない箱を開けてしまう。その後、アダムはよく分からない場所に放り出され、道中を歩いてる中ギルドを見つけ、その中にいる情報屋と名乗る男と出会う。彼に1万G相当の品を渡し、イブの情報を得ようとしたアダム。だが、イブに関しての情報を得ることが出来なかった。しかし、情報屋はラッド・バットラーという数万の冒険者の中のTOP100に入る謎の男をアダムに紹介する。アダムはその男が何か知っていることを期待し、その男との出会いを待つ。
どうかね。このあらすじは
「概ね合ってるんじゃないですかね」
自分の中では20点の出来だ。
「それじゃあ直せばいいんじゃないですかね」
これでも頑張って描写したつもりだが。
「ならいいんじゃないですか? 先へ進みましょうよ」
分かったよ。
――アダム視点。
私はラッド・バットラーという男を待つことにした。
「ほれ」
「何ですか? これは」
「ザル蕎麦じゃ、しかし、人間に興味を示さないあのラッド様がここまでお主に執着するとは、わしにお主の面倒まで見てくれるように頼むぐらいじゃからな。料金はあやつから後払いで頂くことになってる。感謝することじゃな」
私はそんな情報屋のおっさんの言葉を聞き流しつつ、ザル蕎麦とやらを頂いた。
「これは!?」
美味しい。あまりにも美味しい。
イブと生活してたころのリンゴも美味しかったが、このザル蕎麦はその比ではない。
イブにもご馳走したいくらいだ。
「その、反応、お主、この料理を食べるのは初めてだそうじゃのう」
「そもそも、今までイブとリンゴを食べて生活してたんです」
「まあ、お主の話はにわかには信じ難い。だがそれ故にラッドはお主に興味を示したのだろう」
さて、ザル蕎麦が美味しいのはいいが、ラッドという男が気になる。
いや、それ以前にここはどこだ? あまりにもたくさんの情報が入りすぎて、頭の中の整理がつかない。
「現在、あやつはミドカからこちらに向かってきておる」
「ミドカ?」
「地名じゃよ。ここからは結構距離があるから、ここに着くまでには1ヶ月近くはかかるだろう」
わざわざ、そんな遠いところからやって来るとは。
とりあえず、私を気にかけているというラッド・バットラーという人物の詳細な情報が欲しい。
「ラッド・バットラーとはどういう人物なんですか?」
「あやつは結構な変わり者じゃ、それ故にわしはあやつが冒険者ランク数千の時から目を付けた」
「というのは?」
「あやつには他の者にはない異様なオーラがある」
「オーラ?」
「そうじゃ、12歳という若さで冒険者になり、3年後の今では冒険者ランク96位にまで上り詰めておる。あやつはいづれ大物の冒険者になることだろう」
「それで? 変わり者というのは」
「どうも、あやつは神に恨みがあるらしい、”いつか、僕が神を殺す”とわしの前でよく言ってたものじゃ」
同じだ。私と。
私も私からイブを奪った神を恨んでいる。
ラッドは私からその気を感じたのだろうか?
だから、遠くから私にまで会いに来ようとしているのだろうか?
まあ、まだ会ったことがないから何ともだけども、それよりも今は。
「この牛肉定食っていうのください」
「お主、欲張りじゃのう」
食いたいものが多すぎる。
ふう。
「描写お疲れ様です」
どうだ? この描写力。
「ギャグに走ってていいんじゃないでしょうか?」
俺、ギャグ路線ならある程度いける気がするんだよねえ。
「ですが、物語は全然ギャグじゃないですよ」
まあ、それはそうだが、やはり物語にはギャグは必須要素でしょ。
「それはそうですね」
ってか。
「どうしました?」
やっぱ思ったのと違う描写になるなあ。
「それはどういう?」
いや、ラッドの人格はアダムと出会ってから描写しようと思ったんだけど、その前に描写しちゃったんだよねえ。
「ふむ」
何か、自分で書こうとしている展開なのに、自分の想像とは違う展開になる。小説って不思議だなあ。
「それが物書きの楽しいところでは?」
だな。
ただ。
「どうしました?」
この先の展開をどう描写したらいいか。
「またですか? まあ嘆きながらも書けてるわけですし、何とかなるんじゃないです?」
だといいんだが。
「さて、2000文字まで後、100文字切りました!」
残りの100文字で何を描写するかだな。
「ですね描写してみてください」
やってみる。
って、この会話だけで既に50文字もないぞ。
「では挨拶だけでも終わらせましょう。皆さんまた次で




