15「焦らすのも手法」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
いい加減、俺の挨拶でぷつ切りにするのやめないか?
「ちゃんと挨拶したいのでしたら2000文字丁度で出来るよう努力してください」
一応、お前がちゃんと挨拶出来てるのは俺の努力の賜物なんだぞ!
「そうでしたっけ?」
お前の挨拶もぷつ切りにしてやる。
「まあそれより話の続きを」
だな。前回の出来事は読者にとって気になることでもあるからな。
「ここからが作者の腕の見せ所ですよ!」
今まで、散々俺の描写力を貶してたくせに、よくそう掌返せるよな。
「何のことですか?」
もういい。続けるぞ。
――イブ視点。
ある日、突然、アダムが私に声をかけてきた。
「外の壁に大きな穴が出来たんだよ!」
私はその言葉に衝撃を覚えた。
今までアダムと外を探検したことあるけど大きな穴なんてどこにもなかったはず。
「丁度いいことにベビーカーも用意されてるんだよ。アダブと三人で行こう!」
私はアダブを抱き抱えて、半信半疑でアダムに付いていった。
そこには本当に大きな穴が空いていた。
「ほら、私の言った通りだろ」
「ええ」
信じられない。
今まで神の御技はたくさん見てきたけど、ここまでやるなんて。
私たちは壁の奥へと進んでいった。
しかし、どれだけ進んでも一向に出口が見えない。
「ねえ、そろそろ戻ったほうがいいんじゃない?」
さすがにここまで進んで何もないと戻りたくなる。
それに嫌な予感がした。
だけどアダムは
「もう少しの辛抱だ。きっとこの先には神が用意してくれた楽園があるんだよ」
と言って、聞かなかった。
仕方なく、私は壁の奥へと進むしかなくなった。
「もう! 焦らさないでくださいよぉ」
続きが見れると思っただろ! そう都合よくは行かねえんだな。
大事な場面ほど、勿体ぶらせるのが作者の腕の見せ所。
「中には呆れて見るのをやめる読者様もいるかもしれませんよ」
それはその読者さ。
中には焦らされることにイライラしつつも続きが気になって見る読者もいるはずだ。
しかし、こういった視点変えを使う小説家はいるんだろうか?
「中にはいるかもしれませんね」
そもそも○○視点という描写ですら使っていいか分からないのだ。
どっかの小説講座にもそう書いてあったしなあ。
「でも書籍化作家の中にその描写を使っている人がいるのも事実ですよねえ」
まあ、だから俺みたいにプロットとかめんどくさいのを飛ばして書く、プロの小説家もいるってわけだな。
「だからといって貴方がプロの小説家になれるかは疑問ですけどね」
うっせえよ。
「それより続き、描写してくださいよぉ」
まあまあ落ち着け。
これから描写するから。
「次焦らしたら、私も切れますからね」
分かってる。進めるって。
それじゃあ描写するぞ。
――アダム視点。
私たちは壁の奥へと進んでいた。
楽園はまだなのか。
そう思った中。
広い場所に出た。と言っても壁で覆われている。
真ん中には墓みたいなものが一つ建っていた。
「何? ここで終わり?」
イブが呆れた様子でそう呟く。
「何だ。ただの壁か。帰ろ。ん?」
ふと、墓をよく見てみると。
箱みたいなものが置かれていた。
「ちょっと待て、何かある」
「え?」
私はイブを止め、箱に近づいてみた。
その箱はいかにも高級そうな箱で、私の目を釘付けにするのだった。
箱の上には張り紙があり、”この箱、開けるべからず”とだけ書いてあった。
私はイブにも、その箱を見せた。
「開けるべからずだって」
「そうね」
「なあ、開けてみようよ」
「え?」
開けるべからずとあれば却って、開けたくなる。
それが人間の心情だ。
イブは
「やめて! 開けないで!!」
と私を止めに来た。
イブは私を強く引き止めた。
箱を開ける私の腕を引っ張って止めようとした。
「離せ!」
そんなイブを私は力強く振り払った。
イブは悲しい目をしていた。
その目を見て私も悲しくなったが、私はこの箱を開けたくて仕方が無かったのだ。
私は箱を開けた。
はい、終了。
「ええええええええええ!!」
いいよいいよお。その叫び声で文字数を増やせ。
「焦らさないって言ったじゃないですかあ」
一応、進めてるじゃん。
「それはそうですが……」
さて、後300文字もある。少し話そうか。
「話を進めてください」
いや、この続きは次話で
「進めてください!」
強情だねえ、ちみぃ
「視点を変えて先延ばした上に、まだ焦らす。読者から嫌われる要因です」
分かった。分かったよお。進めればいいんだろ。
「ぜひ、そうしてください」
それじゃあ。描写するぜ。
――イブ視点。
アダムがあの箱を開けようとしている。
私は自然とアダムを止めようとしていた。
あの箱は開けないほうがいい。
私の心がそう叫んでいた。
私はアダムの腕を掴み、意地でも箱を開けさせないようにした。
しかし、アダムは強情だった。
ついには私を強引に突き放した。
お願いアダム。箱を開けないで……。
はい、終了。
「もう読者貴方に呆れてますよ」
いや、どうしても次話に持ち込みたくてな。
もう2000文字だ。また次で




