13「描写力コンテスト優勝!?」
「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」
ストーリーで切ってないからセーフ。
「さて、アダム選手にはまだまだ描写を続けてもらいます!」
おうよ。任せとけ。
確か、前回は出産中のイブを見守るアダムの心情を描写したんだっけな。
続けるぞ!
――アダム視点。
「う、生まれるうううう」
イブの身体の中から赤ちゃんの頭が出始めていた。
「聞こえるか?」
急に神の声がした。
はい、聞こえてます。
「子供が生まれたら、そのハサミでへその緒を切るんだ」
分かりました。
ついに頭から身体、身体から足まで、私たちの赤ちゃんが完全に誕生した。
私は神に言われた通り、へその緒をハサミで切った。
無事に赤ちゃんが生まれた。
やった! 私たちの子だ。
ふう。
「あのう」
何かね?
「もう少し詳しく描写して頂けませんか?」
俺にはこれが限界だ。
出産の知識とかねえし。
別にいいだろ? どう書くかは作者の自由だ。
「読者から見放されてもいいんですか?」
というか、もう既に見放されてるんじゃね?
まあ、評価は気になるところだけど、好きに書くってのが俺の主義だしなあ。
「まあ、描写力コンテストですので、どう書くかは作者次第ですが」
ところでさ。
「何でしょう?」
このコンテストって2回目ある?
「誰かが面白がってやってくれればあるんじゃないでしょうか?」
ってことは誰もやらなかったら俺優勝だよね?
「まあ、必然的にそうなりますね」
やったあ! 優勝だあ!!
嬉しくないけど。
「そろそろ次へ進みましょうか」
そうだな。
――アダム視点。
私たちの初めての子供。
最初はイブを苦しめる忌まわしいものめと思ったが。
生まれてみると、その子供も愛おしく見える。
イブも苦しみから開放された穏やかな顔に戻っていた。
「イブ、私たちの初めての子供だよ! 赤ちゃんだよ!!」
イブは私とその赤ん坊を見て、こう言い放った。
「私にも抱かせてくれませんか」
「ああ、いいとも」
私は赤ん坊をイブに優しくゆっくりと手渡した。
イブが赤ん坊を抱いてる姿は絵になる。
そういえば。名前付けてなかったな。
毎日イブの体調ばかり心配してて子供の名前なんて考えたこともなかった。
どういった名前がいいだろうか?
イブと一緒に決めるか。
ちなみに子供は男の子だ。
「イブ」
「何ですか?」
「子供の名前なんだけど何がいい?」
「貴方と私の名前からとって”アダブ”とかいかがでしょうか?」
「いいね!」
子供の名前が決まった!
今日からこの子の名前はアダブだ!
よろしくな! アダブ。
「あのう」
何かね?
「ネーミングセンス酷すぎません!?」
いい名前だろ。両親から取ってるんだぞ。
「アダブはどうかと……。カッコ悪いし呼びづらいし」
それじゃあ何だ? ”イアダ”のほうが良かったか?
「いや、それも無理がありますね」
そうか、それは嫌か。それはイアダか。
「何も上手くないですよ」
まあいいだろアダブで。
「まあ作者の自由なのでいいと思いますが」
さて、子供が一人生まれたわけだが、次はどういった描写をすればいいのだろうか?
「そうですねえ。読者としては盛り上がりが欲しいところ。普通に夫婦円満で仲良く過ごされても面白くはないでしょう」
じゃあ修羅場作ってみるか。俺が神の声でイブに「実はお前の好きな猫、アダムが殺したんだぜ」と吹聴してみるとか。
「自然な流れじゃないですし。読者もそういう展開は求めてないかと思いますよ」
じゃあどうする?
「私はあくまで司会者なので展開はご自分でお考えください」
チッ、冷てえな。
まあ人は戦いを見るのが好きだしな。
「そうですねえ」
勇者は魔王と戦うし。
昼ドラは不倫相手と戦うし。
「ですね。読者は戦いを望んでるのかもしれません」
しかし、どうやってそれを描く。
そもそもこの小説は”一から作ってみる”というタイトルだ。
一から作る過程を描写すべきであってわざわざ戦いを描写する必要は。
「そこは大丈夫じゃないですか? もうタイトル関係ないですし」
どういう意味だ。
「本当に一から作りたいならビッグバンから初めて見てはどうでしょうか?」
…………オーケー。戦う方向で行こう。
「それが賢明かもしれませんね」
戦うとしても誰が戦う?
アダムか?
それとも桃太郎的に考えてアダブか?
それとも面白味を持たせるためにイブか?
「貴方が何を想像して戦うかに寄りますが」
例えばこんなのはどうだ。
――アダム視点。
私はリンゴの木からリンゴをもぎ取り頬張っていた。
リンゴは美味しい。
「あれ?」
このリンゴをもぎ取ることが出来ない。
うーん。どんだけ力を使ってももぎ取れない。
ハサミで切ろうとしても切れない。
クソッ、このリンゴめえ!
アダムとリンゴの戦いが今、始まる!
「…………あのう。私はどう反応すればいいでしょうか?」
笑えばいいと思うよ。
「とりあえず戦いといってもスケールがでかいほうがいいですね。リンゴとの戦いもある意味、面白いかもしれませんが」
やべえ、もう2000文字か。
「ですね。それでは皆様、また次回に」
また次もよろ




