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12「後付けの何が悪い」

「さあやってまいりました第一回描写力コンテスト」


 ストーリーを途中で強引に切る小説なんて、前代未聞だな!


「ですねえ。読者の皆様もさぞお怒りかと思います」


 早速、続きを描写するか。





 ――アダム視点。


 私は急いで、イブの服をイブがいる寝室まで持っていった。

 おっと危ない。いきなりドアを開けるのはまずい。


 今、イブは裸なんだった。

 想像しただけで股間が。

 おっといけない。そんなこと考えるな。


 私は寝室のドアを軽く二回叩いた。


「はい」


 イブの返事が聞こえた。


「服持ってきたよ」

「あ、ありがとうございます」

「ドア、開けていいかな? 大丈夫。服だけ差し出すから」

「はい、お願いします」

 

 私はドア越しにイブに服を渡した。


「終わりました」

「もう中に入っていい?」

「大丈夫ですよ」


 私は寝室の中に入った。

 

「わお」


 服を来たイブの姿は凄まじいものがあった。

 ドレスを着ているイブ。

 まるで、お姫様みたいな。


 裸のイブも見ものだが、これも悪くはない。


「あの、そんなにジロジロ見ないでください。恥ずかしいです」

「おっと、ごめん」


 しばらく静寂が続いた。

 どう声をかければいいのだろうか?

 イブが美しすぎて、声をかける気になれない。





 いいじゃん。いいじゃん。いい描写じゃん!


「かもしれないですねえ」


 恋愛小説みたいじゃん。いいだろ?


「私には分かりかねます」


 少しは乗れよ! 分からず屋め。


「次はどういった展開にするご予定で?」


 もっと濃密に描写してみたくもなるが、それだと18禁になっちゃうしなあ。

 そうだなあ。一応、この二人は一回ヤった関係だから。

 そろそろ子供が出来てもいいんじゃね?


「では、その描写でお願いします」


 どこから進めようかなあ。まあやってみるか。





 ――アダム視点。


 私はイブと楽しい日々を過ごした。

 猫にも優しく接した。最初は殺された恨みからか、威嚇し、逃げ回っていたが、私がリンゴを差し出し続けているうちに私への敵対心も少しづつ薄れているみたいだった。


 そんな日々を送るある日。


「おええええええ」


 イブが洗面所で嗚咽をしている声が聞こえてきた。


「大丈夫か? イブ」

「ええ、大丈夫よ。アダム」


 しばらくイブは嗚咽をした後、私にこう言ってきた。


「子供……かしら」

「子供?」


 そういえば、私とイブは一回性行為をしたことがある。

 もしかして、あの時に出来た子供なのだろうか?

 

 しかし、子供が出来たとして、どうしたらいいのだろう。

 ここには医者はいない。イブが子供を産むとき私がイブのそばで、その手伝いをすることになるがどうしたらいいか分からない。神様、どうか医者を。





 ごめん、医者は無理だわ。


「酷い神様ですねえ」


 まあ、アダムには一人で頑張ってもらうさ。何かあれば俺が神の声なり、そのための道具なり、用意してやるからよ。


「そういえば気になったんですが」


 何だ?


「洗面所っていつ出来たんですか?」


 あれ? 知らない?


「知りません」


 最初に作った部屋の南側に洗面所と風呂場、トイレを設けたんだよ。


「あのう、すいません」

 

 何だ?


「それって、後付け設定ってことでよろしいですか」


 ああ、そうなるな。


「おおっとアダム選手! 小説、いや、漫画、アニメですらやってはいけないことをしてしまった!!」


 何だよお。


「後付けは読者から嫌われる一般的にやってはいけない手法です」


 でも、長いアニメだとよくあることじゃねえか。


「それを理由に後付けをしていいのでしょうか」


 いいんじゃね?


「おおっと! アダム選手爆弾発言!! これは読者の皆様に見放されても無理はない」


 うっせえな。余計なお世話だい。


「このコンテストの司会者としてお見苦しい描写を見せてしまったことを深くお詫びします」


 俺の描写を見苦しいとか言うな!


「まだ後付け設定を続けるおつもりですか」


 まあ、展開によっちゃそうならざる負えないだろう。


「もういいです。続けてください」


 何かやりづらいな。まあいいや。

 次に子供が生まれるシーンを描写してみるが、後付けにならないように、出産に必要な道具はあらかじめ設けてある。後、洗濯、いやこの際、日常生活に必要なものは全て設けてあるっていう設定で。


「読者が置いてけぼりになる姿が目に浮かびます」


 仕方ねえだろ。後付けにしないためにはそこまで設定しとかないといけないの! 

 それじゃあ、続けるぞ。





 ――アダム視点。


 子供がイブのお腹に宿って一年が経とうとしている。

 イブのお腹は徐々に大きくなり、それと同時にイブは苦しい顔を私に見せるようになった。


 出来ればイブのそんな顔は見たくない。

 イブを苦しめる子供を恨めしく思うこともあったが、イブのためにもなるべくそんな感情は抱かないようにした。


 そして、ついにその日がやってきた。

 出産だ。


 イブはベッドの上で叫びながら、苦しい表情を私に向けてきた。


 私はどうしたらいいのだろう?

 イブが苦しんでいるというのに、私は何もしてやれない。

 初めての出産、そして、その出産を手伝えるのは私だけ。

 本当に、どうしたらいいのだろう?





 そろそろ20

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