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俺自身の、最後の答え

 ――ここはどこ? 真っ暗なんだけど。


「最初の空間――というよりも、世界が始まる前の世界って所か。お前が転生したときの場所でもある」

「最初の空間……?」


 うーん、確かに言われてみると身に覚えがあるような、無いような……。


「で、あたしをここに連れて来てどうするつもり?」

「もちろん、本来ならもう一度この身体に戻ってもらって、俺が調整し直してから再度元の身体に戻ってもらう。だがそれは嫌なんだろう?」


 そう言って苦笑しながら、目の前の男であった自分は右手に魔法陣を展開し、あたしに対し臨戦態勢を取り始める。


「さくっと気絶してもらう。それ以外に手はない」

「でもあたしは強いけど?」

「そりゃ、俺が与えた力だからな!!」

「「――【電磁ガンマ】=【直行レイ】ッ!!」」


 同時に発動された、二つの【電磁ガンマ】=【直行レイ】。光のレーザーは正面から激突し、空間が一瞬だけであったが捻じ曲げられる。


「ッ!?」

「ハハッ! 分かるか!? これが今までお前が世界に与えてきた歪みだ!」


 あたしの知らないところで、こんなことが起きていたの!?


「っ、だからどうしたっていうの!」

「なぁに、あの世界に与えられてきた影響を可視化しているだけだ。バタフライエフェクトとは少し違うが、似たようなものだと想像して貰えればいい」


 システムは続けて幾つもの【電磁ガンマ】=【直行レイ】を発射し、それに対しあたしもまた応戦をする。


「分かるか!? 十二階層の魔導方程式マジックカリキュレーションを撃っただけで、この世界には少なからず影響が生じる!」

「だったらこの程度で影響する世界にしなければいいじゃん!」


 あたしなりに言い返したけど、システムはいら立ちを交えながら想定していた世界の仕組みについてあたしに説明を始める。


「最初にルヴィ=ロッドが言った筈だ! あの世界で第八階層の呪文スペルを繋げた時点で、常人なら魔素マテリアルを失って気絶すると!」

「だから何よ! 第八階層以上の呪文なら、あたし以外にも使っている奴いるじゃん!」

「度合いの問題を言っているのだ! 次の呪文が発動されるまでに長い期間があるならいいものの、今回そのスパンが確実に短すぎる! 更に一応の保険として第十二階層以上の魔導方程式を解こうとした途端、発動者の脳がオーバードライブされて破壊されるようにしておいたんだ! それをお前が何度も何度も――」


 システムの放つ魔導方程式は、更に苛烈になっていく。


「【超電エレキック】=【直行レイ】とかずるい! あたしも撃つ!」


 第十三階層の魔導方程式のぶつかり合いは、最初の世界に衝撃波となって広がっていく。そしてそれは、十二階層の魔導方程式とは比にならない強さでもってあたしの体を通り過ぎて行く。


「分かるか!? その身で感じるか!? 階層がたったの一階層深まっただけで、指数関数的に世界への影響は大きくなっていくことを!」

「指数関数って何よーっ!!」

「……そう言えばお前は数学駄目だったな」


 むきーっ! 何か馬鹿にしたなー!!

 怒ったあたしは左手に雷撃の力を集め、そのまま振りかぶってシステムに向かって叩きつける。


「ちっ! 仕方ない――」

「「【雷光ライジング】=【絶撃フォース】ッ!!」」


 第十六階層の魔導方程式同士のぶつかり合いが、今度は空間にヒビを入れ始める。


「くっ……この世界ももう持たない!! 思えばお前がエレナ=ロッドと戦った時に、よくあの世界が壊れなかったものだと感心したものだ!!」


 ひび割れた世界の中、あたしとシステムは息を乱しながらも相対する。互いにバカみたいに【電磁ガンマ】=【直行レイ】を撃ちあったのが、今頃になって効いてきたみたい。


「ここには魔素は無い……だが俺の魔導器官メディアオルガンは、わずかにお前を上回っている」


 あたしの目の前で、システムは勝利宣言をする。


「次の一撃で俺の勝ちだ。これで終わらせてもらう――」


 あたしの頭上に、光の柱が収束を始める――


「【幾何光景ユークリッド】――ッ!? なんだと!?」


 それと同時に、システムの頭上にも光の柱が収束を開始している。

 へっへーん! あたしだってまだそれくらいできるもんね!


「バカな! 十三階層の魔導方程式を置いた時点で、次における筈が――」

「あたしとあんたの容量の差って、わずかなんでしょ? だったら、互いに同じ十三階層の呪文を繋げて効率よくすれば変わらなくならない?」

「なっ! しまった! だがこうなったら!!」


 互いに死なばもろ共ってやつでしょ!!


「「=【崩壊ルイン】ッ!!」」


 同時に放たれた最深階層――第二十六階層の魔導方程式は、世界を完全なまでに崩壊させた。



          ◆◆◆



「――むにゃむにゃ……あれ?」


 青い空。そしてさっきまで何もなかったはずの地面には草原が広がっている。

 白く細かった指が、ごつくなっている……俺、もしかして戻った?


「全く、ああまでされるとこっちの立場がなくなるからにゃー」


 目覚めた俺の目の前で、“あたし”だった時の姿が寝ていた俺の顔を覗き込んでいる。


「……改めて聞くと、にゃーって痛い語尾だな」

「にゃ!? あんたが考えたんでしょうが!」

「……プッ、ハハハハハ!!」


 そうか、俺は負けたのか……。


「ったく、あの後世界を再編成するのに大変だったんだよ? あんたの要望を満たす世界を、世界の皆にばれないように少しずつ入れ替えて行くのは大変だったんだから」


 目の前の少女システムはそう言って凝り固まった体をほぐすかのように、背伸びをする。


「……じゃあ結局俺はどうなるんだ?」

「どうなるって……そのままでいいんじゃない?」

「そのままって……もしかして魔導器官は――」

「今の男の身体にも、同じものが備わっているから大丈夫! それに今度はあたしも面倒見についてくるから!」

「あたしもって……えぇっ!? お前がついてくるの!?」

「へっへーん! どうだった? あたしの体? 貧乳だのなんだの言ってくれたけど、結構名残惜しかったりする?」

「そもそも神様って性別どっちなんだよ!?」

「どっちでもイケるけど? にっひひー!」


 少女はいたずらっぽくそういうと、目の前の空間に穴を空けてあるべき世界の姿を映す。


「さて、元の世界にもどろっか!」

「元の世界……ああ、そういう――」

「ルヴィ=ロッドには自分で説明してね! あたしは説明するの面倒だし!」

「ちょ! ってことはこのままかよ!」


 俺は目の前の少女と身体を改めて交換してもらおうとしたけど、目の前の神様とやらはそんなのお構いなしといった様子だ。


「さて、新たな世界へと旅立とうではないか!!」

「ルヴィになんて言えばいいんだよ!」

「知らなーい! 好きだって言えばいいんじゃないかにゃー!!」


 少女は笑いながら世界へと飛び出し、そして俺もまたその姿を見て新たな日常へ期待に胸を膨らませながら、俺達のいるべき世界へと帰っていった。


 それから――




「――おかえりなさい、薫くん」

「ただいま、ルヴィ」

 これで東条薫もとい、西条薫の物語はおしまいです。オチは当初から考えていましたがここまで来るのに意外と長かったです。最後まで読んでいただいた方には多大なる感謝を。そして、TSというお題で書いていくことが楽しめたことに感謝を。

 以上で彼女の物語は完結ということになります。ここまでのご精読ありがとうございました。


(8/21追記)この度新たなTSものを書こうと模索中です。詳しくは割烹を見ていただければ幸いです。

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