むむむ……?
店の裏庭に来たけど、店番しなくていいのかにゃ?
「店番にはうちの孫にさせるから心配する必要ないよ! あんたはこっちに集中して!」
そう言われて今あたしの手が握っているのは何の変哲もないただの箒。だけど結構年季が入っていて古いみたいで、毛先が広がりっぱなしの不格好な箒だ。
「あたしは何をすればいいの?」
「とにかくまたがりなさい。後は箒が教えてくれるから」
教えてくれるってそんな適当すぎるでしょ……。
「ここは従いましょう、薫さん」
仕方ない、ルヴィがそういうなら。
あたしはおばあちゃんに言われるがままに、箒にまたがってみた。すると体の内側から何かがスッと抜けていくような、脱力感に見舞われる。
「ふにゃぁ……」
「薫さん!?」
「ちょっとだけ魔素を貰っているだけだからそんなに気にしない……って、だいぶ吸い取っているようだね。そんなにこの子の魔素が凄いのかい?」
魔素ってそんなに人によって違いが出るのかー? それにしても――
「きついっす……」
あたしが箒を手放すと、当たり前だけど箒はぽとりと地面に落ちる。そして落ちた箒をおばあちゃんが拾うと、箒の毛を一本ぬきとって早速解析に取り掛かる。
「……ふぅむ……面白いねぇ」
「何が?」
「かなりの魔素が蓄積されていて、解析が複雑で難しいねぇ」
おばあちゃんはポケットから老眼鏡を取り出すと、本格的な解析を始めるつもりみたい。
「ちょっとしばらくかかりそうだから、他の所を見回って来ても構わないわ。大体……そうねぇ、一時間くらい見積もっておけば大丈夫かしら」
「普通ならどれくらいで解析が済むのですか?」
「そんなの解析表と見比べてほんの一、二分で済む話だけど……この子の場合、複雑な要素が絡み合っているから、私が自分で一から見直さなければならないからね」
「そんなに面倒くさいんだ、あたしの魔素……」
「それだけ凄いってこともあるわけよ」
そういうと箒屋のおばあちゃんは、まるで新品のジグソーパズルを最初から組み立てていく楽しそうな子供のように、楽しそうに解析を始めた。
「じゃああたし達しばらく外の他のお店見回ってくる!」
「いってらっしゃい……さて、久々に腕が鳴るねぇ」
店を後にしたあたしだけど、まだ少し倦怠感が残っている。
「だいぶ吸い取られたって感じ……?」
「薫さん、少し休みましょうか?」
「大丈夫、もう直ってきたから」
何回か深呼吸をして、空気中に漂う魔素を精一杯吸い込む(つもりで魔素が溜まらないかにゃー)。
「箒屋さんを見たけど他に珍しいお店とかないの?」
「珍しい、というよりこのマギカで有名なお店は……薫さん、あちらの方に行ってみましょうか」
「どこに?」
「到着してのお楽しみです」
そう言ってルヴィは足取り軽く先を歩く――って、ちょっと待って、あたしまだ少し疲れているんだけど!
「待ってよルヴィ! って、あれ?」
あたしはこのときたまたまふと横を見ただけだった。
街ゆく人々の中、あたしはよく知る顔の男の子が通り過ぎるのを見た気がした。
「あれ? おかしいにゃー?」
なんであたしの前世そっくりの男の子が見えたんだろ?




