衝撃の!?
倉庫の下に隠された細い通路を、あたし達はひたすらに歩いていく。
先を知ろうと思って【電磁】=【捜索】の魔導方程式を使って電磁波の反射から先の様子をうかがおうとしたけど、反射波が帰ってこないんだよね。
「少なくとも空き部屋なら空き部屋だけの反射波が来るはずだから、何も帰ってこないってことは何かあるってことだけどにゃー」
恐らく敵が状況を知られるのを嫌がって、何らかの対抗式を使ったんだろうけど。
「逆位相の波をぶつけられたか……しかし距離からしてそう遠くはない筈」
逆位相の事は知らないけど、ガルーダ先生が言うからには敵は近いらしい。
そしてあたし達がそんな話をしている時に、あたし達の後ろからよろよろとついて来ていたジャックが、勝手にルヴィに話しかける。
「これ以上は進まない方が、お前にとっては幸せだぞ……」
「何を言っているのです?」
「あっ! ちょっと勝手に喋らないでくれる!? それとルヴィを惑わそうとしたってそうは――」
「惑わすのではない。親切心で言っているのだ」
ジャックはクククク、と笑うともう一度同じことを今度はあたし達にも言った。
「これ以上は進まない方が、お前達にとっても幸せでいられるということだ」
「……意味分かんない。ルヴィを連れさらおうとしている集団を潰すことの、一体何が悪いのさ」
「……貴様等は興味本位で、この世界の裏のシステムに首を突っ込もうとしている。警告はしておくぞ」
全く、負け犬の遠吠えなんて嫌になっちゃうね。
どっちにしても、あたしがルヴィを守るって決めたんだから先に進むしかないんだから。
「……いるな」
ガルーダ先生の警戒する声と共に、あたしは先に【電磁】の呪文をおいて右手に電気を纏わせる。
「…………」
あたし達の行く手の先に、どこかへと続く閉ざされたドア。その両脇には《悪魔の右腕》の紋章を付けた軍人二人が。
「お待ちしておりました」
こっちの対応とは対照的に、相手の二人は礼儀正しく頭を垂れ、そしてその場に立ったままである。
「……どういうことかにゃ?」
「分からん。無抵抗の者に手を出すわけにもいかないだろうし、今はドアを開けて中を確認するしかあるまい」
罠の臭いしかしないんだけどね。
そしてジャックはドアの前に立つ二人を見て、そしてルヴィを見て最終警告をする。
「ここが最後に引き返せる場所だ。今ならまだ引き返せる……そして、ルヴィお嬢様」
突如ジャックはルヴィの名前を呼ぶ。ルヴィは昔呼ばれていた呼び方に驚いた様子で反応しているけど、あたしは警戒を強めた。
ジャックはルヴィの名を呼んだあと、懇願するかのようにこう言った。
「今なら、大人しく家に帰れば何もこの人達に被害は及びません」
「えっ……」
「どういうこと!?」
その言葉に、あたしとルヴィは驚いた。どうして家から離れた筈のジャックが、ロッド家がルヴィを追っていることを知っているのか。
ルヴィはまだ気づいていないみたいだけど、あたしはそこでようやくジャックの言う“警告”の意味を理解した。
「……ルヴィはどうする? ここで引き返すのも、あたしはありだって思っちゃったんだけど」
「薫さん? どうしてそんな事を言うのですか?」
だってこれをこの場で言っちゃったら、多分ガルーダ先生もルヴィを責めると思う。
あたしはルヴィの味方だ。だからこそここで引き返したほうがルヴィにとってもショックが少なくて済むと思う。
「私は進みます! 何があっても!」
あたしの迷いに比べて、ルヴィの決心は固かった。ルヴィは勢いよくドアを開いて、その目の前の光景を真っ先に目にした。
「――えっ」
「あらあら、そっちから反省して帰ってきたってことかしら?」
「……どういうことですか」
ルヴィの視線の先に立っているのは一人の女性。その瞳は他人を嘲るように笑っており、その口元は他人を小ばかにするような笑みを作り出している。
「どうして、お母様がいらっしゃるのですか……?」
「――おかえりなさい、ルヴィ。貴方もロッド家としていずれは知るべきだったのよねぇ」
最近主人公の猫語尾が深刻化している気がしますが大丈夫ですかね……(自問自答)




