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異世界で計算とかやーだー!

 その後あたしとルヴィの二人は廊下を歩いて入学式が行われるとされている大広間の方へと案内されることに。そしてその案内人とはなんと、先ほどの魔導軍最高司令官であるアレクサンドロ=ドゥルガーである。

 どうやらあたしが先ほど解いた魔導方程式を大層気に入ったようで、その後の試験監督を部下に任せてもっとあたし達と話をしたいのだそうだ。

 それにしても――


「あー面白かった。あそこにいた人たち皆驚いてやんの」

「貴方、本当に何者なのです?」

「普通の異国育ちの人間だってば」


 あたしの決まり文句の言い訳に対し、先頭を歩いていたアレクは大きく口を空けて笑い始める。


「はっはっは!! 異国の人間なら誰でも足して十二階層の魔導方程式マジックカリキュレーションを解けるとでも? どんなに才能があろうと、そのようなでたらめな式を解こうとしたとたん、魔導器官メディアオルガンはおろか解くための脳までもが暴走し、その場で昏倒するぞ」


 つまりあれほどの規模で魔法を放っておいてその後もけろりとしていることが、アレク達にとって尋常ではないほどに凄いことらしい。

 別にきつくもなんともなかったけど? 頭も痛くないし。


「ふーん……」


 あたしは適当に頭の後ろに両手をやって歩いているが、ルヴィはあの【雷光ライジング】=【絶撃フォース】を放った時点から、あたしに対し驚きと畏敬の念を交えた視線しか向けてこない。


「君は本当に軍に興味はないのか? 国家魔道士になるのもいいが、魔導軍なら手厚い待遇でもって――」

「だから争いごとに興味ないって!」


 今興味があるのはこの世界の出で立ちと、魔導方程式そのものなんだから!


「……もったいない」


 アレクは大きくため息をついているが、これは曲げられない。それに今は女の子の身なんだから、軍隊なんて似合わないでしょ。


「……ここで待機をしておきなさい。席は自由に座っていい」

「……ひろーい!」


 いや広いから大広間なんだろうけど。それにしても広すぎる。

 はるか前方にある、横に長いテーブルは恐らくここで教えている先生の席だろうというのは置いておいて、とにかく入り口から部屋の奥の方に広がるテーブルの長いこと長いこと。ここにどれだけの生徒が並ぶのであろうか。


「どうする? 奥の方に座る?」

「……まだそこまで合格者はいないようですね。席を見る限り、まだ全体の席数の割合に対して一割程度しか合格者がいないようで」

「……ごめん、割合とかそういう数字の話は止めて」

「? どうしてですか?」


 まさかここまで来てそういう話が飛び出るとは思わなかった。


「……あたし実はそういった計算が苦手なの」

「意外ですね……魔導方程式に関しては天才的な貴方が、まさか数学を苦手としているなんて」


 ルヴィはそう言ってあたしの方を見てクスクスと笑っているけど……なんかバカにされている気分。


「う、うるさーい!」


 ルヴィをポカポカと叩いた後、逃げるように奥の方の席に向かう。


「ここにすーわろっと!」


 適当に前の方の席にすとんと腰を下ろせば、真っ白なテーブルかけが視界を制する。


「……なんか入学のしおりとかないのかな?」

「そのようなものは無いようですね」


 後からすたすたと歩いてきたルヴィが横に座って静かに待機する。その様は確かに優雅で良家のお嬢様だと納得できるものだが、だとして何故抜け出してきたか。


「……まあどうでもいっか」


 それより――


「ねぇ、ルヴィ」

「はい?」

「今度から、あたしの前で数学の話をしないでね?」

「どうしてです?」

「人にはね、苦手なものが必ずあるってこと」


 テーブルの上でだれているあたしを前にルヴィは首を傾げていたが、あたしにとっては死活問題である。

 とにかく、数学の話は嫌いだ!!


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