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お呼びでない!? それはこっちのセリフ!

 黒い手に乗ったあたしは、自分が今向かわされている方角へと顔を向ける。


「なんか駅とは反対側に飛んでいるみたいだけどー!?」

「恐らく、ガウンタウンの方に向かっているのでは!?」


 風切り音に声をかき消されながらも、あたしはルヴィの口からガウンタウンという気になる言葉を聞きとった。


「ガウンタウンって!?」

「マギカでもあまり法の手が届いていない区域だそうで、入学式の際も近寄らないように言われていたじゃないですか!」

「ごめーん、入学式の時、そんな話聞いてなかったから」


 改めて話を聞いたところによると、あたし達みたいな少女なんて街角を二回すぎるまでにどこかにさらわれるか、殺されるかってくらいに治安が悪い所らしい。おおー、怖い怖い。

「恐らく、ガウンタウンに《悪魔の右手デヴィルスアーム》の本部があるのか、本拠地となっているのでは……」


 行き先がガウンタウンと知ったルヴィは、いくらあたしでも無理かもって思っちゃったみたいでさっきよりも沈んだ表情を浮かべている。

 だからこそあたしはルヴィに手を差し伸べ、楽観的に笑ってこういった。


「敵の本拠地? だったらサクッと潰して、一緒に帰るよ!」

「……どうして……どうして、貴方は……」

「どうしてって、あたしはルヴィの友達だからでしょ!」


 あたしとしては当然のつもりだったけど、ルヴィは何故か、涙を流していた。


「ありがとう、薫さん……ありがとう……」


 さーて、色々とやり取りしていたところで例のガウンタウンって奴が見えて来たみたいだけど――


「……うわー、すっごい」


 予想より汚れた街――っていうか、どっちかっていうと入り組んだスラム街? これから夜に差し掛かっていくのもあるんだろうけど、なんか街全体が怪しげな雰囲気抜群。

 魔導方程式の痕跡なのか、壁が所々焦げていたり、穴が空いていたりもしていて危険なにおいがプンプンする。


「自分の本拠地までわざわざこんなことをしてまで引きずり込むのですから、薫さんも気をつけて」

「大丈夫。あたしが助けるから」


 黒い手の高度が下がり始めると共に、あたしとルヴィの間にも緊張が走る。


「来たか……ん? 招かれざる客くっついているようだな」


 黒い手が向かうその先――三方を大きな建物に囲まれた広場の中心に手、軍服を着た若い男の人が待ち構えている。

 男の人はあたしを見るなりポケットから青白く光る石を取り出し、口にくわえる。恐らくあれが魔原石エリクシアってやつなんだろう。


「先に降りてもらうとしよう……【暗黒ダーク】=【引力カミング】!!」

「うわわっ!?」


 急に下向きに引きずりおろされるような感覚に襲われ、あたしはとっさに【光速ソニック】=【消失バニシング】を解いて適当な建物の足場の方へと逃げる。

 男は恐らく最初の一撃であたしを地面のシミにでもするつもりだったのだろう、あたしの回避を見るなり男は目を丸くする。

 そしてその後すぐに、アタシについて知っているような口調でこう言った。


「フッ、お前がレールの言っていた例のイカれた魔導器官の持ち主か」

「だったら何よ?」


 あたしは男を見下ろしながら、敵の様子をうかがい続ける。ルヴィは男のすぐ近くにて丁重に降ろされると、あたしの方を不安げに見つめている。

 男は何か含むような笑いをもらすと、ポケットからもう一つ魔原石エリクシアを取り出す。


「ロッド家の娘の方は丁重に扱うように指示されているが、貴様については特に何も言われてはいない……」


 男は魔原石エリクシアを飲み込むと、新たに魔導方程式を展開し始める。


「ならば貴様の魔導器官を頂戴しても、何ら問題はないな」

「あたしを倒せるなら、やってみなよ」


 男は黒い闇を左手に込め、あたしは白い雷を右手に込める。


「【暗黒ダーク】――」

「【電磁ガンマ】――」


 あたしと目の前の男は、ほぼ同時に魔導方程式を解き終える――


「「=【直行レイ】!!」」


 直後に、闇と光が激突することとなった。


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