こんなことだったらスカートはいて来るんじゃなかった!
へっくし! あれー? 誰か噂でもしているのかにゃ?
「ふー、寒いからかにゃ?」
「風邪引いてんのか?」
「ち、ちがうと思いますけど……」
「この時期は風邪に似た症状で酷い流行病があるらしいからな。てめぇも気を付けろよ」
へいへい、っと。
ヴィンセント先輩に気を使われているけど、本当にただのくしゃみなんだよね。
それとそろそろ七曜魔導学院の学区に近づいてきているはずなんだけど、相変わらず風景は変わらない――
「ん? あれは……」
「あれって?」
ヴィンセント先輩が窓の外に注目しているのを見て、あたしも同じように窓を見やる。すると外には列車と並走する様に荒れ地を馬で駆ける集団が。
一人一人はフードを被っているから顔までは見えないけど、なーんか怪しい感じ。
「……もしかしたら」
「ああ。てめぇの予想通りだ」
フードを外した途端、相手の正体はすぐに分かった。
「《悪魔の右手》……!」
「もう追ってきやがったか!」
「先輩! どうしますか!?」
「どうするもこうするもねぇ! 他の乗客に被害が出ねぇうちに、俺達でカタを付ける!」
そういうと先輩はあたしを連れ、そしてフューリーとルヴィにキリュウ先輩の面倒を頼んだ後に列車の連結部分へと向かって行く。
「どこに行くのですか!?」
「例の奴等が来たんだよ、ルヴィ! 気をつけて!」
「はい!」
ヴィンセント先輩は列車の外に出て屋根へと昇り、まだ下にいるあたしの方へと手を差し伸べる。
「早くつかまれ!」
「えぇっ!? 屋根にあがるんですか!?」
「そうだ! 【鋼鉄】=【脚】を使えば風で押しやられることも無い! 急いで上がれ!」
そうじゃなくて……もう、ヴィンセント先輩はあたしの気持ちがわからないかなー!
「分かりましたよ! 上がればいいんでしょ!」
「なんでてめぇはキレてんだ?」
「もういいです!」
列車の屋根に上ったところで、敵は既に準備はできているところだ。あたしは強風になびくスカートを押さえながら、ヴィンセント先輩の方を向く。しかしこちらの困りごとに気づいていないのか、ヴィンセント先輩は敵の方ばかりを睨んでいる。
「こうなったら【爆炎】=【全壊】で粉々に――」
「だから言っているだろうが! 少しは自重しろ!」
ちぇー……これさえ解ければあいつ等なんて物の数にも入らないのに。
馬の数は全部で六頭。一つ一つ潰すには面倒だし、それこそいっきにカタを付けようと思ったのに。
だけど他にも攻撃手段があるからいっか!
「じゃあ、これならどうですか! あたしの得意技なら!」
あたしはそう言って右手を引き、手のひらにバチバチと電気を溜めこむ。
「【狙撃】=【電磁】=【直行】!!」
空気を切り裂くような轟音と共に、光の柱が一直線に敵の方へと突き進んで行く。
爆発とともに一頭の馬が消え去るを確認すると、あたしは先輩の方を向いてニコリと笑う。
「補助式つけてみたんですけど……これで一つずつ仕留めていくっていうのはどうです?」
「けっ、可愛い面してえげつねぇなてめぇは」
可愛いって褒めてくれた! っていうのは置いておいて、えげつないってどういう事さ!?




