魔原石ってなーにー?
えぇーと、あたし達は今七曜魔導学院方面の列車に乗っています。
キリュウ先輩は席を二つ使ってベッド代わりに横になって眠っています。起こしたらかわいそうなので、皆静かにしています。
フューリーとルヴィは丁度キリュウ先輩の席と向かい合うように座っています。
で、あたしはというと……。
「……まさか、第十六階層どころか十九階層とは……しかも片方は十二階層の呪文を交えてとは……もはや伝承や昔話のレベルに至る訳だが……」
「ハイ……」
あたしと向かい側に座っているフューリー先輩が、何故かムスッとした表情で怒っているご様子。
原因は明快なものだ。あたしがところ構わず深層の魔導方程式をぶっぱなしている件についてだった。
「少しは自分があり得ないレベルの異端児だということを考えろ」
「でも、キリュウ先輩が倒れているのを見て、頭にきちゃって……」
「その気持ちが分からないというつもりはない。だがそのせいで、新たな障害に目を付けられることもあるということを肝に命じろ。何よりその才能はお前自身が隠したかった事だろうが」
「あ、あはは……そうでしたっけ……」
「はぁ……自覚なし、か」
でも他の人における格下の魔導方程式を放つ感覚で発動出来ちゃうから困ったもんだ。
あたしは話題を逸らすかのように窓の外を見やると、そこには草原が何処までも広がっている。マギカからシュラスタに来るときもそうだったけど、この世界において街周辺はそれなりに栄えているけど、そこから一歩離れればこんな感じの草原や荒れ地が広がっていて全然開拓されていない。
こう考えるとあたしが元いた世界は随分と発展していたんだなーと思っちゃう。なにせそこらじゅうにビルが建っていたからね。
「…………」
「――おい、聞いているのか!?」
「あっ、ひゃい!?」
「ったく、人の話を聞けよ……とにかく、しばらくは第十四階層以降の魔導方程式を解くことを禁止する」
「えぇっ!? それじゃ【光速】=【消失】も使えないってこと!? そんなー……」
「駄々をこねるな、潤むな、そんな目で俺を見るな! どういわれてもこれを破ったら反省文百枚だ!」
げっ!? 反省文百枚!?
「しょ、しょんなー……」
フューリーはキリュウ先輩の容態を観察しながらも、席でぐったりとするあたしを横目に見ている。
そしてあたしはアイコンタクトで何とかしてよとフューリーに訴えたが、フューリーはすまんといった仕草をとるだけで何も出来そうにない。
「あーあ、絶対後悔しますよせんぱーい」
「しない上にさせない。そのために今回俺が来たんだ」
「えぇー、やーだー、もっと魔導方程式解きたいー」
「全く、普通なら十二階層を一回解いただけで息切れするレベルなのだが、どうしてこいつはこうも元気なんだ」
そりゃー魔導器官の出来が違いますから。
って、そういえばどうしてキリュウ先輩の魔導器官だけが切り取られたんだろう? 無力化するという事ならそんな回りくどいことはしないで殺している筈なのに。
「……ヴィンセント先輩」
「んん?」
「どうしてキリュウ先輩は魔導器官だけとられたんですか?」
あたしの質問に対し、ヴィンセント先輩はこう言う公の場ではあまり話したがらないかのように、声を小さくしてあたしにだけ聞こえるように話しを始めた。
「……ごほん……魔原石というものを聞いたことがあるか?」
「全然ないです」
「そうか……魔原石というものはその名の通り、魔導器官のように魔素を貯蓄できる石のことだ。まあ、魔素の塊とでもおもっておくといい」
「それがどうしたんですか?」
「てめぇのように最初から魔導器官の要領がバカでかい奴には全くの無縁の話になるが、俺達のような普通の魔導師が十三階層以上の魔導方程式を解く場合、どうしても魔素が足りなくなる。そこで編み出されたのが魔原石だ」
むむっ、何やら難しそうな話に。
「魔原石の特性はさっき述べた通り、魔素を蓄える石だということ。つまりこれを体内に摂取すれば、疑似的に魔導器官の容量を増やすことになる」
「……つまり?」
「つまり、普通の魔導師でも深い層の魔導方程式を発動できるようになるということだ」
「な、なんですと……!」
あれー? それってあたしのお株が奪われちゃうんですけどー?
「だがこの魔原石は消耗品だ。魔素を全て吐き出せば体内で全て消化されて消える」
なんだ、それは良かった。
だけどヴィンセント先輩の次の言葉は、あたしにとってはあまり良くないことだった。
「そして今回、この魔原石の原料が問題となる……魔原石の原料は魔素を蓄える器官、単刀直入に言えば魔導器官が原料だ」
「ってことはキリュウ先輩の魔導器官が奪われたのって――」
「察しの通り、魔原石を作り出すためだ。この魔原石の魔素を蓄える容量は、元々の原料にする魔導器官の要領に依存する。だからこそ、奴等はキリュウのような才ある者の魔導器官を奪い取ったんだ」
「……許せない」
「当たり前だ。現に魔原石を製造することはマギカにおいては厳罰対象になる。それを行っている《悪魔の右手》は、軍でも重要指名手配になっているほどだ」
「次に会ったらあいつ等めちゃくちゃのぼっこぼこにしてやる!」
「……今の話で気づかないのか? お前の魔導器官も狙われているかもしれない、というより確実に狙われているぞ」
他の人とは桁違いの要領を持つあたしは、敵にとってはのどから手が出るほど欲しいのかもしれない。
ヴィンセント先輩はああいったけど、少なくともあたしはキリュウ先輩の仇を取るまでは戦うつもりだ。
「全く、てめぇは頭がいいのか悪いのか分からねぇところがあるな……」
ヴィンセント先輩があきれ顔でそう言っていたけど、キリュウ先輩の仇を撃ちたいという気持ちには、同調するような雰囲気を見せてくれた。
次回くらいに、一旦呪文と階層をまとめた回を出したいと思います。




