くんくん、これまた新たな事件の臭いがする!
「さーて、まだやる? あたしは全然イケるけど」
腕をグルグルと回しながら、あたしは残った軍の面子の方を見やる。
まっ当然と言えば当然だけど、あれだけ十四階層の魔導方程式を連発されたら絶句をして当たり前か。
「じゃ、そういう事で理解できたかにゃ? 魔導方程式を侮っているとこうなるって」
「じ、十分に理解したよ……これからは、キチンとした対応もさせてもらうとしよう」
うっくっくっく、それでいいのだよそれで。グラモリウスとかいう人も魔導師対策を検討してくれるみたいだし、これで万事解決って所か。
「――なるほど、ここは魔導師対策ができていないのか。これは大変朗報朗報」
「うにゃっ!?」
「どうしたんですか薫さん? 突然振り向いて」
今何か聞こえた気がしたんだけど……気のせいか?
「……なんでもないよ」
「? 変な薫さん」
うーん、確かになんか不吉な声が聞こえた気がしたんだけどなー。まあいっか!
「とにかく、ルヴィが出場してケガとかじゃなくてよかったよ」
「おい……俺はいいのかよ」
「別にあんたは男の子なんだし、大丈夫でしょ! ……あたしだって以前に不良の謎の腹パンを喰らったことがあるんだし……」
おえっ。あー、変なところで前世の記憶がよみがえるー。
「……とにかく、この件についてはよしとしておくか」
キリュウ先輩としてはもう少し穏便な済ませ方を予定していたっぽいけど、あたしは戦う順番が今であろうと最後であろうとこうしてやるつもりだったけどね。
さて、ちょうど午前中で終われたみたいだし、午後からはどうするのかな。グラモリウスって人も時計を見て都合がいいと思ったのか仕切り直すかのように昼食の時間にしたがっているし。
「と、取りあえずお昼の時間帯だ。チミたちもそれだけの実力があるなら、午後からは待ちの見回りを……おい、ヤング!」
「えっ!?」
あっ、守衛の嫌味ななおっちゃんだ。なんか偉そうにしてたのが今度は面倒事を押し付けられたかのように嫌そうな顔をしている。
「なんで俺が面倒事を……」
「何か言ったか?」
「いえ、何も!」
絶対言ったと思うけどね。
まあいいや。午後からようやく外に出れそうだし、まだまだ街の人が沈んだ表情を浮かべる理由とか、この軍のスキャンダルがありそうだし。
「そろそろお腹空いたしにゃー」
レッツお昼といきますか!
◆◆◆
「――ふぅ、満腹まんぷく」
「薫さん、やけに牛乳を飲んでましたね」
そりゃー、大きくなる秘訣を教えてもらったからには飲んでおかないと……って門前で話している間に例の守衛さんが来たようで、面倒くさそうな態度を露わにしてこっちの方に来ている。
「あーあ、なんで俺が毎回面倒事押しつけられなきゃなんねぇんだ……」
愚痴が思いっきり漏れているんですけどそれは……。
「貴方が今回我々を指導してくださる方ですね」
それにしてもキリュウ先輩ってすごいなー。相手がどんな怠け者の阿呆でも一応軍人としての敬意は払うんだね。
「ああ、そうだ。俺がお前達の指揮監督を頼まれているヤングだ。階級は伍長、つまりお前達四人と俺を含めて丁度五人の小隊長を務めることになる」
そういえばさっきのカグラっていう人といいこのヤングって人といい、名字が無いってことは平民出身ってことかな?
「見回り中は俺の指示に従ってもらう。最近のこの街において、特に気をつけるようなところはないだろう。だが、見回るということはこの街の不穏因子を見つけることと同意義。よってお前達でも見て気がついたところは俺に言うように、以上だ。何か質問は?」
「ないでーす」
「今の話で、把握しました」
「まっ、気をつけて見ればいいんだよな?」
「……質問は無いようです」
なんかキリュウ先輩が申し訳なさそうにしているけど、そんなにあたし達の対応が悪かったのかにゃ?
……あたし達っていうより、あたしだけどね。




