ぐんじえんしゅー!
「――なるほど、つまり対魔導師の軍事演習を手伝ってくれるという意味かな?」
「ハッ! 僭越ながら、この軍部には魔導師を相手取って戦える機会が少ないと思い、我々を利用していただけないかと思った次第です」
キリュウ先輩の堂々とした言葉を前に、グラモリウスは納得せざるを得ないものの首を傾げている。
「うーん、流石の我々でも学生の魔導師見習いごときに後れを取るつもりはないのだがね……」
しかしグラモリウスの方も軍としての威厳があるのか、中々こちらの挑戦を受けてくれる気配がない。
キリュウ先輩は軍に貢献できる機会を失ったと思ったのか、がっくりを落とす。
「そうですか……ならば仕方がありません」
そしてここまでは予定通り。そこからはあたしが一芝居打つことに。
「……ねぇねぇ、もしかしてここの人達が負けるかもとか思っちゃっているんじゃない?」
「か、薫さん!? なんてことを言っているんですか!?」
「ぬぅ!?」
あたしは聞こえるレベルでわざとらしくひそひそとグラモリウスの前でルヴィと内緒話を始めた。
当然グラモリウスの耳にもその挑発発言は届いているようで、明らかにこちらに向かって憤慨の表情を浮かべている。
「だってさー、魔導方程式関連の施設がないってことは対策を打てていないってことでしょ? そんなところに対魔導師の軍事演習を申し込んでもムリムリ」
「……ぐぬぬぬぬ……いいでしょう。受けて立ちましょう」
いら立ちを携えながらも、あくまで紳士的な対応。グラモリウスは明らかにあたしに対し敵意を持った目線を向けつつ、軍事演習を受けてくれた。
◆◆◆
「いいですか? こちらは演習用のゴム弾を使いますが、そちらはどんな魔導方程式を使っても構いません。こちらが一撃を当てるか、そちらが一撃を当てた時点で勝敗を決しましょう」
運動場に出たあたし達は、軍の人達と反対側に立って試合に臨む。
訓練場というだけあってリアルな荒れ地や市街地を再現とでもいうべきか、隠れるための岩場や建物などが設置されている。
「最初に誰が行く」
「あっ、じゃああたしが――」
「薫さんが出たら初戦で全て決してしまうと思うのですが……」
「でも魔導方程式を舐めちゃいけないって事はよく分かるんじゃない?」
「しかしそれでは後々面倒じゃねぇの? 適当にやっていい勝負でしたってした方が面倒事を回避できると思うけどなぁ」
「そろそろ最初の試合を始めましょうか」
向こう側は既に最初の選手を決めているようで、既に片手に猟銃を持って前に出ている。
「じゃあ、俺が初戦に出るよ」
「えぇ? フューリーが?」
「ああ」
頭を掻きながら、面倒事はさっさと片付けたいとでも言いたげにフューリーは前に出る。
「初戦は貴方ですか? では、始めますが宜しいですか?」
「ああ。宜しくお願いします」
フューリーは礼儀正しく頭を下げたが、向こうの方は頭を下げずに戦闘態勢に入る。
「なんか感じ悪ーい」
「薫さんの煽り方がいけないのでは?」
えぇー……大人げなさすぎでしょ。
「……では、始め!」
開始の合図とともに、軍隊側の男はすぐに一発発砲を開始する。
「危ねぇ!?」
フューリーはすぐさま岩場に隠れると共に、岩場の隙間から敵の様子をうかがう。
敵は既にフューリーが隠れている岩場に狙いを定めており、照準がそこから微動だに動く気配もない。
訓練が温いとはいえ軍人は軍人。戦闘となればそれなりに動くプロである。
「……仕方ねぇ」
フューリーは岩場に隠れた状態で、魔導方程式を急いで解き始める。
「【炎】=【分散】!」
フューリーが魔導方程式を解き終えると同時に、岩場から突如炎が上がる。何の変哲もない岩から炎が上がる様は、男の判断能力を一瞬だが鈍らせた。
「何!?」
「今のうちに!」
炎に気を取られている隙にフューリーは男の支配から脱出し、別の岩場へと移動する。
「フューリーさん、何とか脱したようですね」
「でも、もう相手は油断しないよ」
あたしの思っていることは、フューリーも重々承知している。
「あんなビックリネタは一発だけしか通用しねぇ……」
フューリーは敵の様子をうかがいつつ、次の魔導方程式を解き始める。
「もう容赦はしねぇぞ!」
「ヒィ、俺だってできればこんなことはしたくねぇよ……」
相手の脅し文句にビビりながらも、フューリーは着々と魔導方程式を解いていく。
男はフューリーと同様に物陰に隠れながらも、敵の様子をうかがう。
こうして最初の試合が開始され、あたし考案の魔導方程式の重要性を分からせる作戦は開始されることとなった。




