アハハ! あたしを捕まえてごらんなさーい!
人狼って……狼男で合っているんだよね?
「クロウン先輩、アリスが人狼ってどういうことですか?」
「見ての通り、耳に尻尾、それに――あら? 体躯はオオカミじゃないわね」
書物とかで見るあのおどろおどろしい体格、といった感じではなく単に可愛いアリスにイヌ耳と尻尾がついただけで――
「うぅ……ぼ、ぼく……ぼく……」
くっ、涙目の男の娘にイヌ耳とモフモフ尻尾がついただけで、これほどの破壊力があるとは……は、鼻血が……。
「薫さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫、ちょっとあり得ないコラボレーションに頭がくらくらしているだけだから……」
それにしても、どうしてアリスが人狼に?
「一体どういう事?」
「……ぼくの一族……ブラッドストーム家は代々こういう病気なんだ……血を見ると身体じゅうがぞわぞわして、周りを血まみれにしたいって思っちゃうんだ……」
アリスの近くのテーブルには昼食が置かれていて、そこには中途半端に焼かれた肉に血がしたたり落ちている。
恐らくそのせいでこんなことに?
「だから《ブラッドストーム》……なるほどねぇ」
近くにはハァとため息をつくマコトと、テーブルの上を片付けながらアリスの様子をうかがっているフューリーの姿が。
「フューリー、どうしてアリスがこんなことに?」
「ねえ、僕には聞かないの?」
「おお、トウジョーか。俺とアリスとマコトの三人で飯食ってたら、生焼けのチキンを見るなりアリスが驚いて立ち上がっちまってよ……」
「ねぇ、僕は無視かい!?」
「今のぼくには近寄らないで……! 友達を、傷つけたくない……」
騒然とする食堂の最中、大人しく食堂を去ろうとするアリスの後をあたしはついていく。
「ねぇ、アリス――」
「ぼくに、近寄らないで!!」
アリスはこちらの方を向かず、軽い力であたしを押し返したつもりだった。
しかし――
「ッ!?」
「ッ、危ねぇッ!」
気がつくとあたしの身体は宙を浮いていて、フューリーがかばってくれなかったらそのまま壁に叩きつけられているところであった。
「いつつ……」
「あ痛たた……ッ!?」
「ったく、大丈夫か? トウジョ――」
うん、庇ってくれたことはとっても嬉しい。嬉しんだけど――
「さりげなくあたしの胸を揉んでんじゃねぇー!!」
「ぐはぁっ!? な、なんで……」
鳩尾に肘鉄を喰らわせることで何とかその場で怒りをぶつけ終えると、あたしは再びアリスの方を向く。
「……あたしの服も少し破けているし、アリスったら結構大胆ね」
にゃーんて軽口も叩いていられないよねぇ……あと一歩余計に踏み込んでいたらお腹の肉まで抉られていたかも。
「貴方の友達だけど……アタシが抑え込みましょうか?」
「いいです。あたしの友達は、あたしが何とかします」
それにしても、拘束するタイプの魔導方程式は覚えてないしなぁー。
「……どうしよっかな」
「もう、これ以上壊したくない……」
しかし苦しんでいるアリスをそのままにしては置けないし……。
「……そうだ!」
あたしは簡単な魔導方程式をその場で解くと、アリスに敢えてぶつけてみる。
「【水滴】=【投擲】!」
「わわっ!?」
あたしは手に生み出した水滴を、まるで水風船のようにアリスに投げつけた。
「な、何をするの!?」
「へっへーん。悔しかったらこっちまでおいでー!」
あたしは舌を出してあっかんべーとアリスを挑発すると、そのままアリスが見失わない程度に校庭に向かって走り出す。
「ぼ、ぼくでも怒るよ!?」
「じゃああたしを捕まえてみなよ、アリスちゃん!」
「このー!」
おー、一見すると涙目の男の娘に追われるというステキ展開なんだけど、捕まったら八つ裂き確定なんだよねー。
まっ、まずは校庭まで引きずり出して、被害を広げないようにしてからどうにかするしかないっか!




