イヌ耳ピコピコワーウルフ♪
「クロウン=クラウン……馬鹿なッ!? クラウン家だと!?」
男はクロウンの名乗りに対し、明らかに怯えた表情を見せ始めた。
「クラウン一家といえば、七つの魔法家においても軍事行為に積極的に加担する一家! かの
大量殺戮方程式を生み出したとされる恐ろしい一族!!」
うげー、聞く限りかなりヒャッハーな一族にしか思えないんだけど……。一見して唯のオカマなお兄さんがそんな恐ろしい一家の名を持っているなんて、人って見かけによらないねぇ。
「アラ、そんなに物騒なウワサになっているのねアタシの家。コワいわー」
クスクスと一区切り笑い終えた後、クロウンと名乗った青年はべろりと舌につけているピアスを見せつける。
「じゃあそのウワサにかなう実力を見せつけないと、おばあ様に怒られちゃうわね」
ルビーの装飾がついた舌のピアスを光らせ、クロウンは更に魔導方程式を解きにかかる。
「刺激が強いから女の子は目をつぶってなさぁい――【爆炎】=【斬撃】♪」
クロウンが右手で撫でるように空を切ると、部隊の男には横一線に焦げ付くような跡ができ、そして上半身と下半身が綺麗に分かれてしまった。
「……が……は……」
「さて、と……死体は生徒会で片づけておくから、貴方達は通常の授業に戻る様に。それと、先生方にはもしかしたら後で集まってもらうかも」
人を一人殺しておいて平然とニコニコしている姿は、異世界に来たばかりでまだこの世界の常識に慣れていないあたしにとって、不気味に見えてしまった。
「……うげー、帰ろ……」
この世界の軍事関連でも、これはまだ慣れないかなー。
あたしはひとまず屋上を去ると共に、ルヴィのことが気がかりになり捜索することにした。
◆◆◆
「――ルヴィ、どこにいるのかな」
学校内を探してみたけどどこにも見当たらない。まさか、殺気やってきた奴等のせいで学校から出て行っちゃったとか――
「いやいやいやいや! そんなことあっちゃいけない!」
そう思って時計を見ると、ちょうどお昼の時間。
「もしかしたら食堂にいるかも!」
そう思ったあたしは、急いで食堂の方へと走っていくことにした。
「どこかなー?」
いくら辺りを見回しても、それらしい人影はどこにも見当たらない。
「どこに――あっ」
ルヴィを見つけたのは良かった。しかしそこに同席していたのは――
「……ク、クロウン先輩?」
「アラ? 貴方は誰?」
「あっ、薫さん! よかった、この方は――」
「いや、知ってるけど……」
「なんと、お知り合いでしたの」
「アタシは何も知らないわ」
話がいまいちかみ合わないけど、あたしはさっきの出来事を見ていたということを告げた事で何とかあたしとクロウン先輩とのつじつまが合った。
「それにしても、アタシ以外の七曜の魔法家の人と会えるなんてちょっぴり嬉しいかも」
「言われてみれば、そうですね」
「そういえばルヴィ、さっきのは家の人達じゃなかったの? 普通に斬られてたけど」
「あれは……違います。私の家にあんな軍服の人がいた記憶はありません。それに――」
「あれは恐らくテロリストよぉ。ルヴィ=ロッドが逃げ出したって情報をどっかから手に入れたのか、人質にして身代金を得ようとしたって所かしら」
「……それってマジですのん?」
えっ!? それって中二病患者の脳内にしかないアレじゃなかったの!?
「七曜の魔法家はどこも高貴な身分だからねー。アタシもヴィンセントもしょっちゅう狙われていたわ」
そんなことよりよく見るとこのクロウンって人、腕に魔法陣のタトゥー入れているんだけど……。
「……と、取りあえずお昼食べよっか?」
「そうですね」
「アタシもそろそろお昼食べようかしら。昨日から色々と忙しかったのよねー」
まじかよ、この人も一緒に食べるのかー。
あんな怖い事をしていた後だと気が引けると思ったが、そこにあたしにとっての癒しが通りすがる。
「あっ! アリスだー!」
よかった! 丁度いろんな意味でワンクッション欲しかったところなんだ!
あたしは後ろから飛び付こうとしたが、その前に気がかりなことがあって旧ストップすることに。
「……アリス?」
「ひっぐ、ぐすっ……」
「もしかして、泣いてる……?」
だ、だだだ、誰だあたしの天使を泣かせたのはぁー!!
「大丈夫!?」
「い、今のぼ、ぼくに触らないで……!」
よく見るとアリスには犬のような耳に、尻尾が生えている。
「……どうゆうこと?」
「……アラ、まずいわね」
クロウン先輩はアリスの姿を見るなり何かを察したように、深刻な表情を浮かべている。
「……彼、人狼よ」
えぇっ!?




