実践えんしゅー!!
「いいか。まずは【鉄鉱】=【皮膚】の魔導方程式を解いて、自身の身身体を強化しろ。話はそれからだ」
あたしはヴィンセント先輩に言われるがまま魔導方程式を解き、見た目は変わらないものの身体を硬質化させる。
「後は何か式を一発でもいいから俺に当ててみろ……安心しろ、俺も同じ式を解いてある」
ヴィンセント先輩はそう言って無防備に立っているけど……あたしあんまり弱い呪文を知らないんだよなー。
かといって【電磁】=【直行】を当てようものならミクム先輩に睨まれるし、ヴィンセント先輩から何を言われちゃうのか。
「……えーと、何を解けばいいのか」
「っ……お前、七曜の中で自分が得意な属性とかないのか?」
「そもそも何が得意なのかっていうのが判りません……」
「……おいミクム、昨日お前がこいつを連れて帰ったはずだよな? その辺の話とかしてねぇのか?」
あっ、ちょっと待って。そっちに振るのは――
「……ミクムが知っているのは、そいつが【電磁】=【直行】で行動の天井を壊したことくらい」
「……なんだと?」
あーあ、やっぱりこうなっちゃった。
ヴィンセント先輩はミクム先輩の話を聞くなり、あたしを怪しむような目でにらみつける。
「……てめぇ、やっぱり基礎を知りたいとかウソをついて生徒会に入りこむつもりだったのか! どこの差し金だ!」
「えっ!? えぇーっとそんなつもりじゃ――」
「吐け! 吐くつもりがないのであるなら、むりやりにでも聞きだす!!」
先輩はそう言って、とうとう戦闘用の魔導方程式を組み始めた。
「【鋼鉄】=【錬金】=【手腕】!!」
「えっ!? 呪文が三つ!?」
あたしの驚く暇もなく、先輩は地面から生えでてきた鋼鉄で出来た巨大な腕を振るい、あたしを捕縛にかかる。
「危な! 【光速】=【消失】!」
鋼鉄の腕の猛攻に対し、閃光を散らしながらあたしはその一撃一撃を回避する。
「馬鹿なッ!? 【光速】=【消失】だと!? 十四階層の魔法を使うとは、てめぇは死ぬ気か!?」
「死ぬ気はないけど!」
それにしても、呪文三つを連結しての式なんて初めて聞いたんだけど! ヴィンセント先輩もしかして隠してた!?
「だったら、こっちも隠し玉使うしかないよね!」
あたしは左手を構え、空中で裏拳を繰り出す姿勢へと移行する。こうなったら、ヴィンセント先輩を打ち負かして、話し合う体勢にむりやり持ち込むしかない。
十六階層の魔導方程式を解き終えた瞬間、あたしの左手に雷のエネルギーが宿る。
「【雷光】=【絶撃】ッ!!」
鋼鉄の腕と、雷神の腕が激突する――
「ッ!? まずい――」
勝敗は言わずもがな。十六階層なんて前代未聞の魔導方程式に勝る訳もなく、鋼鉄の腕は脆くも砕けちり、それを操っていたヴィンセントも吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「――大丈夫ですか!?」
土煙の中、あたしは敵対していたヴィンセント先輩の元へと駆け寄る。
「ふざけやがって、ゴホッ! 十六階層とは、化け物か……」
「これには色々とワケがあるんです! てゆーか、ミクム先輩が話端折ったのが問題でしょ!?」
「……ミクムは悪くないもん」
もう、これじゃ田舎から出張ってきた可愛い後輩とはいえなくなっちゃうじゃない。
ひとまずヴィンセント先輩の前に手を差し出すと、あたしは改めて自分の境遇を語る。
「……あたし、それこそ魔導方程式すら知らないほどの地方の出身です。ですから、今回もこうなるなんて思っていなかったんです」
「……信用できねぇ、と言いたいところだが、てめぇなら本気になれば俺達を潰すくらい容易かっただろうよ……今はその言葉を信用しておいてやる」
ヴィンセント先輩はあたしの手を取って起き上がると、そのままあたしの頭に手をポンポンと置く。
「少しは自嘲するってことを覚えておけ。そうすれば悪目立ちはしないだろうよ」
ヴィンセント先輩はそれ以上何も言わず、その場から去っていく。
「……一応、そこまで目を付けられずに済んだのかな?」
あたしが頭を掻いて先輩の背中を見送っていると――
「“全校生徒に告ぐ! 侵入者を発見! 生徒は最寄りの先生方の元へ避難指示を仰ぐように!”」
「何だと……またきやがったのか」
「ヴィンセント、行くの……?」
「行かなかったら何のための生徒会だ! ……おい一年!」
「は、ひゃい!?」
突然声をかけられたあたしは、思わず変な声を漏らしてしまった。
「てめぇもついてこい! てめぇの実力なら戦える!」
「で、でも実践は――」
「いいから来い! これが実践レッスンだ!」




