先輩によるやさしい魔導方程式入門!
今回説明回です。
無事に授業を終えることができたあたしは、丁度いいと思ってヴィンセント先輩にこの後魔導方程式の基礎を教えてもらえないかと頼み込むことにした。
「フン、あれだけのことが理解できるなら基礎はいらねぇと思うんだが――」
「そこを何とか! あたし、先輩に一から教えてもらいたいんです!」
後輩から頭を下げられると断れないのがこの先輩のいいところであり、ちょろい所。
ミクム先輩からは相変わらず疑惑の目を向けられてはいるものの、ヴィンセント先輩は「仕方ねぇ……」と呟いた後にあたしをこの前の魔導実験室へと連れて行った。
「ここなら大丈夫だろ。ここは自習室も兼ねているからな」
「あれ? この前壊れてたところが直ってる……」
「俺が直した。ったく、骨が折れる仕事だったぜ……ミクムはいつまで部屋にいるんだ?」
「ミクムは、見張り役……」
「ったく、何の見張り役だ」
首を掻いてラフに立つ先輩と相対する様に、あたしは丁度部屋の反対側に立たされることに。
「教えるっつったってどこから教える? 俺には分からねぇから、てめぇが知りたいところから――」
「最初っから全部で! 七曜とかそういうものから、魔導方程式の組み方まで!」
「……マジで基礎の基礎からだな。まあいい、俺も復習程度にはなるか」
首の後は頭を掻いて、ヴィンセントはこの世界における七曜そして魔導方程式の全てを語り始めた。
「まず、この世界で魔導方程式を解く才がある者、簡単に言えば魔法を少しでも使える者には必ず魔導器官という内臓器官がある。もちろん俺にも、てめぇにもだ。俺達は呼吸をする際、この大気中にある魔法の元――魔素を無意識に魔導器官に溜め込んでいる。溜め込める魔素の量には生まれつきの個人差があって、これがどれだけあるかによってどれだけ階層が深い魔導方程式を発動できるかが決まってくる。ただ頭で解けても、この魔導器官が容量不足なら魔法は発動されない。まあどれだけ頑張ったとしても、通常の人間なら十二階層の魔法を一発撃てるかどうかだけどな」
つまりこの学校だと十階層の式が解ける上で、更に魔導器官がそれだけの魔法を発動できるくらいの容量を持つ生徒だけが合格だったってことだから、ルヴィの言う通りやっぱりエリート学校になるのかー。
「魔導方程式はこの魔素を魔力として変換し、事象として変換する役割を持っている。いわば変換式みたいなものだ」
なるほどなるほどー。
「七曜を説明する前に、先に魔導方程式のざっくりとした解き方だけを説明する。基本的に左辺が属性やその度合いを表し、右辺がその属性でもってどんな事象を引き起こすのかを決める。例えば右辺を同じ【投擲】にしたとしても、実際に投げ出されるものの性質は左辺で決まる事から考えると、左辺が【火炎】だと【火炎】=【投擲】となって火の球を投げつけることとなり、左辺が【氷雪】だと【氷雪】=【投擲】となって今度は氷の塊を投げつけることになる。逆に左辺を【火炎】で固定した上で右辺を【発散】にすると、炎が四散することになる」
にゃるほどにゃー。ここまでは普通通りに理解できるわ。
「次に、魔導方程式の階層についてだが、これは右辺と左辺の呪文に元々の階層があって、それらをイコールでつなぐ――つまり右辺と左辺の階層同士を足し合わせることで最終的な式の階層が決定する。先ほど言った【火炎】=【投擲】だと【火炎】が第五階層、【投擲】が第二階層の呪文になるから、最終的な【火炎】=【投擲】の階層は二と五を足した七階層になる」
へぇー、あたしの場合【電磁】=【直行】だと【電磁】の部分が第七階層で、【直行】が第五階層だから、最終的な階層は十二階層ってなるんだ。
……通常の人間なら一発撃てるかどうかの魔法をあほみたいに撃っていたあたしって一体……。
「少し発展的だが、例えば同じ十階層の魔導方程式でも、五階層足す五階層の場合と、八階層足す二階層のような場合では魔素の消費量が違う。基本的には五階層同士のように、最終的な階層を二で割った階層同士で足し合わせた方が魔素の効率はいい。だが威力を重視するのであれば、少しでも高い階層の呪文を織り交ぜた方が効果的だ」
じゃあ、【雷光】=【絶撃】だと同じ八階層同士だから魔素の効率はいいけど、同階層の魔導方程式の威力としてはイマイチってことなんだ。
「次に七曜について説明をする。七曜とは、日、月、火、水、木、金、土の七つの属性のことを指す。日曜は主に光や電気系統を司り、月曜は重力や闇そのものを司る。火曜はその通り炎系統を司り、水曜は水系統を司る。木曜は風や植物を司り、金曜は少し特殊で物質系統を司る。そして最後に土曜は地面を、つまり大地を司っている。これら七曜の呪文は左辺にて使われる事が多いな」
ふむふむ、だいぶ分かってきた気がする。
「これで一応一通り説明は終わりだ。何か質問は?」
「うーむ、今のところないです!」
「フン、なら上等だ。後は一年の基礎授業でしっかりと地盤を固めろ。基礎はやっておいて損はねぇからな」
ヴィンセントはそう言ってその場を立ち去ろうとしたが、ここであたしに一つの考えが浮かび上がる。
「……先輩!」
「ん?」
「じゃあ次は、実践演習をしてみてもイイですか!?」
さらなる興味がわいたあたしは、今度は実践したくなってきていたのだ。
そんなあたしの輝く目を見て何か思うところがあったのか、ヴィンセント先輩はため息をついて戻って来てくれた。
「……少しだけ、付き合ってやろう」




