第43話 受験生からの依頼その二十二 不安で夜も寝られない&試験会場にて
【受験生からの依頼その二十二 不安で夜も寝られない】
依頼:不安で夜も寝られない
回答:昼寝しろ(おたぬき様)
来年があるわー(三浪生)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
【試験会場にて】
二次試験当日。
午前の試験も無事に惨敗し、昼休みに静夜が試験室で昼食を取っていると、部屋の外から見知っている少女が入ってきた。
こすずちゃんだ。
彼女は手にお弁当箱を持ち、静夜の元へやってきた。
「奇遇だな。今日は何の用で来たんだ?」
「ちょっと受験しに」
「知らなかった、志望はここだったのか」
「そうですね、午前の結果から言って、死亡することになるでしょう」
こすずちゃんはお弁当箱を広げると、手を合わせてから食べ始める。ちらっと弁当箱を覗くと、中には見慣れない食材ばかりが入っていた。
静夜の視線に気づいたこすずちゃんが胸を張る。
「験担ぎという意味で、今日はこんなラインナップになってます」
「へぇ。ちなみにこれはなんだ?」
「『周りの受験生がみな腹痛で苦しめ!』という願いを込めて消費期限切れの卵で作った玉子焼きですね。色が変なのは薬品のせいです」
「こっちは?」
「『試験用紙が唐突に燃え出す』という期待を込めて、燃えるほど辛い鷹の爪ですね」
「このどろどろしたのは?」
「グリスですね。みなが滑りますように、という熱い想いを込めました」
「このおにぎりにも何か入ってるのか?」
「下心が少々。あ、静夜さんにあげますね。食べてください」
にっこりと彼女は笑みを浮かべる。
静夜はひょいとその小ぶりなおにぎりをつまむと、ぱくっと口の中に放り込む。
こすずちゃんが失笑する。
「なんでためらいなく食べるんですか。変な物が入ってたらどうするんです?」
「ま、そのあたりは信じてる」
「なら残念なお知らせが」
食べかけのおにぎりをのどに詰まらせそうになる。
慌ててお茶で流し込むと、こすずちゃんが愉快そうに笑った。
「冗談ですよ。それは下心込めて作った健全なおにぎりです」
そう言うとこすずちゃんはお弁当箱を閉じて、すっと席を立つ。
「なんだ、もう行くのか?」
「ええ。目的は果たしたので」
「俺に毒でも盛るつもりだったのか」
「惜しいですね。――誰かさんが、あたしの作ったお弁当を食べたいと言っていた覚えがあるので、ちょっと来ただけですよ」
「俺、そんなこと言ったか?」
「さあ、どうでしょう? まあ、なんでもいいです。あたしがそうしたかっただけなので」
こすずちゃんは含みのある笑みを浮かべると、ひらひらと手を振りながら去って行った。




