第24話 新人会議 その二
「次回依頼が来たときに、新しいメンバーを連行してこようと思っておる」
ある日の夕暮れ時、おたぬき様がそんなことを言ってきた。
「お、見つかったのか?」
「うむ! 水面下での一方的な交渉も進み、あとはここへ連れてくるだけだ!」
「さらにここがにぎやかになるわねー」
真穂さんがいつもに増してにこにこと笑みを浮かべる。
こすずちゃんも興味があるのか、ゲームをする手を止め、おたぬき様の元に駆け寄っていく。
「おたぬき様、その人の写真とかあったら見せてくださいよ」
「だめだ、秘密!」
「けちー。じゃあせめてその人がドエムかどうかだけでも教えてください」
「ドエム枠なら静夜で我慢しておれ」
「え、俺?」
急に話が飛んできて静夜は戸惑う。一方こすずちゃんは、そうならそうと早く言ってくださいよ、と言わんばかりの嗜虐に満ちた表情を浮かべている。
慌てて静夜は首を横に振っておく。
「っていうか新メンバーが来るなら、歓迎会の準備もしておかないとな」
「あっ、あのピザ食べ放題の! ぜひやりましょう!」
こすずちゃんが浮き浮きした様子になるが、そんな彼女に静夜は残酷な事実を打ち明ける。
「無料なのは新メンバーだけだ。既存のメンバーからは料金を取る」
「ひ、ひどいです!」
「伝統だ、あきらめろ」
「じゃ、じゃあ、あたしこの委員会やめます! それですぐ入り直すので、またタダににしてください!」
「その手が通用するなら俺だってやめる」
「じゃ一緒にやめましょう」
「……よし」
静夜とこすずちゃんはがっつり握手を交わす。
二人して手をつないだまま、おたぬき様に申し出る。
「俺たち、やめることに」
「よし、燃やすぞ」
おたぬき様が術式を唱え出す。静夜たちはすっと頭を下げる。
「すみませんでした!」
「よろしい。そんなおぬしらに朗報がある」
「なんだ?」
「ちこう寄れ」
くいくいとおたぬき様が手招きしてくる。静夜とこすずちゃんは多少警戒しながら近づいていく。
にやりと不敵な笑みを浮かべて、おたぬき様が小声で話す。
「今回の歓迎会だが。なんと代金は、真穂が全額面倒をみてくれるそうだぞ」
「――神だ、神様がいた!」
静夜たちは真穂に手を合わせる。にこにこしている真穂からはまるで後光が差しているかのように感じた。
だが心配になった静夜は、真穂に近寄り小声で尋ねる。
「けど本当にいいのか?」
「はいー。実は歓迎会に備えて、バイトのシフトを多めに入れておいたのよー」
「……なんていうか、俺としては受験がんばってくださいとしか言えない」
「今を楽しめない限り、未来なんて無価値よ」
笑顔で真穂さんがそんなことを言ってくる。
静夜はかなり迷ったが、心底金欠だったため、素直に真穂さんの好意に甘えることにした。
おたぬき様がバンッと扇子で机を強く叩く。
「よし、さっそく何が食べたいか各自報告してくれ! 私はきつねうどんさえあれば満足だ!」
「この予備校から出前を取っていいんですか?」
「前回もそうだったし、大丈夫だろ」
「今から楽しみねー」
それからわいわいと騒ぎながら、何度も脱線しつつも、確実に歓迎会への準備は整えられていった。




