第23話 受験生からの依頼その十二 過去問が解けない
今回の依頼。
『過去問が解けなくて自信を失ってます、助けてください』というものだ。
おたぬき様がうーん、と声を出す。
「こういうのは私でなく、教職員に相談すべきだと思うんだが……。まあいい、聞かれたからには答えてみせよう! みなのもの、意見を求む!」
静夜が挙手する。
「よし、静夜、言ってみてくれ」
「俺も解けない。助けてほしい」
「うーむ、役に立ちそうにない。次、こすず」
間髪入れずにこすずちゃんが口を開く。
「あたしも解けません! へるぷみー!」
「ええい、そろいもそろって。過去問など二度と出ない問題だろうに、前向きに捉えてみよ!」
「そうは言われてもなぁ」
「ねー」
静夜はこすずちゃんと頷き合う。
おたぬき様が顔を前に向けたまま扇子だけを真穂さんへ向ける。
「一応聞いてみるが、真穂、おぬしはどうだ?」
「わたしは過去問は得意よー」
「なんと。何かコツはあるのか?」
「そうねー、やっぱり過去問は巻末に答えが載ってるから、それを見ればすぐ解けるわねー」
おたぬき様が立ち上がって机をひっくり返そうとする。
「落ち着け、おたぬき様。答えを見てすぐ理解できるってのは、わりとすごいことだと思う」
「そ、そうか。それもそうだな!」
座り直したおたぬき様が気を取り直し、自分の服の乱れを直す。
と、こすずちゃんが「はいはい!」と挙手してくる。
「こすずよ、なんだ?」
「そもそも過去問を勉強することのメリットって何があるんですか?」
「ふむ。いろいろあるが、まず第一に、過去問を解けば解くほど、『へへ、オレ去年のあの問題、ばっちり解けたぜ』と周囲に自慢することができ、まだ勉強していない相手にダメージとプレッシャーを与えることができる」
「おお!」
こすずちゃんがぐっと身を乗り出してくる。
「さらにそれに加え、過去問では問題作成者の出題ミスが露見しているため、『これ作った教授、試験後はすっごく赤っ恥かいただろうなぁ』と嗜虐的な喜びを見いだすことが可能だ」
「すばらしいですね!」
こすずちゃんの目がきらきらとしている。
「あとはそうだのう、過去問の載った赤本は、分厚いため手軽な鈍器になる」
「長所ばっかりですね!」
「また過去問により、出題の傾向と対策が分かってくる」
「あ、そういうのはいいです」
身を乗り出していたこすずちゃんがすっと席に座り直す。
しばらく静寂が続いたあと、おたぬき様が口を開いた。
「ともかく。過去問は大事だ。過去を制したものが未来を制する。――ふむ。過去を制したものが、未来を制する!」
そのフレーズが気に入ったのか、おたぬき様が二回繰り返す。こすずちゃんは携帯ゲームを取り出してゲームを始めたが、真穂さんからぱちぱちと拍手が返ってくる。
「それじゃあおたぬき様、今回の依頼の答えはそれでいきましょうかー」
「うむ!」
おたぬき様が依頼書を解決済みボックスにしまう。なんの解決にもなってない気がしたが、静夜は特に口出しはしないでおく。代わりに一つ提案してみることにした。
「たまにはこの救済委員会も、過去の実績を振り返ってみるか?」
「……埋もれたままにしておいた方がいい過去もある」
じっと視線を注ぐと、おたぬき様は気まずそうに目をそらした。




