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第21話 受験生からの依頼その十一 飲み物

 今日はこすずちゃんが忙しいため、彼女を除いたメンバーで依頼を解決することになった。


 今回の依頼――というか相談は、『受験勉強のときにおすすめの飲み物はありますか?』という内容だった。

 実に単純な相談だと静夜は感じたが、一方でおたぬき様は小難しい顔をしていた。

「うーむ。食べ物ならいくつか役立ちそうなものは知っておるが、飲み物となると何がいいのかのう」

「そんな深く気にしなくていいだろ」

 静夜がそう答えると、おたぬき様はわざとらしく大きなため息をついた。

「まったくおぬしは。受験生は体が資本、特に体へ摂取するものには人一倍注意を払う必要があるだろうに」

「そうよ、静夜くん。これはすごく難しい問題なの」


 珍しく真穂さんがまじめな顔つきをしてそう言ってきた。


「難しいって言うと?」

「科学的根拠に詳しいこすずちゃんが居ない現状、どうやって私たちでおすすめの飲み物をでっち上げるのか、大変だと思わない?」

「そこは素直に体に良さそうなものをすすめたらどうだろうか」

「となると、定番はハチミツとかかしら?」

「ああ、紅茶とかに入れるといいんだっけ」

 その言葉に、真穂さんがしゅんとした表情になる。その理由が分からず静夜が困惑していると、おたぬき様が彼の足を軽く蹴ってきた。

 それから彼女はこそこそと耳打ちしてくる。

「こら静夜、せっかく真穂がボケたのに、まじめに返してどうする」

「ボケだったのかよ。すさまじくわかりにくかったんだが」

「次はしっかり頼んだぞ」


 ごほん、とおたぬき様がせき払いをして、話を真穂さんに振る。


「して真穂、おぬしのおすすめの飲み物はなんだ?」

「そうねー、ホットミルクとかかしら」

 そう言い終わると、真穂さんがわくわくした様子で静夜に視線を向けてくる。おたぬき様もじっと見てきた。

 静夜はだいぶ悩んだあと、

「牛乳かよ!」

 と苦し紛れに言ってみる。

 真穂さんが嬉しそうな表情をし、おたぬき様が深く頷く。今のでよかったらしい。


 ごほん、とおたぬき様がせき払いをする。


「して静夜、おぬしにも意見を聞こう。何かあるか?」

「ここは俺もボケるべきなのか?」

「ふざけてるのか、まじめな会議中だぞ」

「おう、上等だ。なら俺も何の面白みもないまじめな返答をしてやろう。温めたジンジャエールとかどうだ? 体があったまるぞ」

「じんじゃえーる?」

 おたぬき様が小首をかしげる。

「ん? 知らないか? しょうがが入ったやつだ」

「飲み物にしょうがを入れるのか?」

「あー、待ってろ、確かここの自販機にもあったはずだ」

 静夜が席を立つと、すぐに真穂さんが呼び止めてきた。

「それなら持ってきてるわよー、わたしのをおたぬき様に飲んでもらいましょう」

「お、ちょうどいい」

 真穂さんが下の方で何かごそごそと漁ると、机の上にごとんとおろし金を置いた。隣に生のしょうがを並べる。

 真穂さんがおたぬき様に説明する。

「自動販売機に粗悪品も売ってるけれど、こうやって生のしょうがを直接おろして出たエキスを飲むのが一番なのよー」

「ほう。だが辛そうだな。しょうがが苦手な私だと厳しそうだ」

「そこで登場するのが、ハチミツー」

 どんと真穂さんがハチミツの瓶を机に置く。

「おおー!」

「はいおたぬき様、口を開けてください。下ろしたしょうがを放り込むわ。それからハチミツも流し込むわねー」

 言われたとおり、素直におたぬき様が口を開けて上を向く。そんな彼女に静夜は敬礼を送ってから、口直しのジュースを買ってあげるために部屋の外に出る。


 それからすぐに、おたぬき様の悶絶する声があたりに響き渡った。

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