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第19話 受験生からの依頼その十 お腹が痛くなる

 おたぬき様が今週に唯一届いた依頼書を手に、説明を始める。


「今回は、『試験のときに限ってお腹が痛くなるのを治してほしい』という依頼だ。ふむ、確かにプレッシャーを感じると胃が痛くなることもあるだろう。ただしおぬしらは除く」


 おたぬき様が一同を見回しながらそんなことを言ってのける。

 すぐさまこすずちゃんが反論した。

「失礼な、あたしたちもナイーブですよ!」

「ではあるのか、腹痛になったことが」

「ありますよ! お昼ご飯を食べ過ぎて、午後から何度お腹が痛くなったことか」

「今回の問題点は切実だ。試験の点数に直接響いてくる」

 おたぬき様がこすずちゃんをスルーして話を進めていく。

「あのー」

「真穂、発言を許可する!」

「お腹が痛くなったら、寝ちゃうとすごく楽になるわよ」

「試験はどうする?」

「また来年があるわー」

「静夜、意見を聞かせてくれ」

 手慣れた様子でおたぬき様が真穂さんをスルーして静夜に視線を向けてくる。


 静夜は読んでいた新聞をたたみながら考えを口にした。


「精神的な問題だとは思うが、やっぱり胃薬が効果的なんじゃないか? たとえ身体的に効果がなくても、気分的には薬を飲んだことで安心感が得られるし」

「プライバシー効果というやつか」

「プラシーボのことか」

「そう、そのプライバシーだ!」

 いまいち伝わっていないようだったが、おたぬき様が満足そうにしているので静夜は指摘を入れないでおく。

「ただ胃薬程度のことは、この依頼者も試してると思うだよなぁ」

「ふむ。つまり依頼者が考えもしないような突拍子もない意見を私たちが出せばいいんだな」

「その言い方だとろくな答えが出そうにないと思うんだが」

「あのー」

「真穂、発言を許可するぞ!」

 真穂さんがにっこりして意見を口に出す。

「お腹が痛いなら、代わりのものに気をそらせるのがいいと思うのよー」

「というと?」

「たとえば、自分の手をちょっとつねってみるとか、コンパスでひざを刺してみるとか」

「ふむ。そうすれば確かに腹痛から気をそらすことが可能そうだな。別の問題は生じそうだが」

「あとはそうね、精神的に余裕を持つのもありだと思うのよ。お腹が痛くなることを悪いことだと捉えているから不安になるんだし、そうじゃなくて『お腹が痛くなったら、ちょっとお手洗いに行けばいいだけだ』って自分に言い聞かせておくと、気も休まるかなぁと」

「おお。真穂、いいではないか! 今回の答えはそれでいってみるか」

「コンパスでひざを刺す?」

「違う」


 と、こすずちゃんがびしっと手を挙げた。

「はい!」


「こすず、言ってみてくれ」

「腹筋を鍛えてみる、という手もありますよ。筋トレして、むきむきに鍛え上げるんです」

「ほう、それが腹痛対策に効果があるのか」

「さあ?」

「適当か」

「でも心を鍛えるにはまず体からだと思うんですよ。受験生はただでさえ体がなまるんですし、効果は高いかと」

「むむ。そう言われると納得するのう。ふーむ、どちらの意見もよさそうだ」

「いっそ間を取りましょう」

「そうするか」

 というわけで今回の答えが決まった。



 依頼:試験のときに限ってお腹が痛くなるのを治してほしい


 回答:腹痛を悪いことだと捉えると不安になるので、そうではなく『お腹が痛くなったら、ちょっと筋トレしに行こう』と自分に言い聞かせておきましょう。

 そうすればきっと、むきむきになれるぞ!

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