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第18話 新人会議 その一

 

「そろそろ頃合いかのう」

 おたぬき様がぽつりと言葉を漏らす。それから全員に席に着くよう指示を出してきた。


「依頼か?」


 静夜が尋ねると、おたぬき様はにやりと笑みを浮かべた。

「そうそう毎日依頼が来るほど私が信頼されておると思うのか、たわけめ!」

「だから強気な自虐やめろ、もの悲しい」

「今日は新人について意見を聞こうと思ってのう」

「新人? あたしのことですか?」


 こすずちゃんが小首をかしげる。この中で一番新しく加入したのはこすずちゃんだったが、おたぬき様は首を横に振った。


「新しくメンバーを加えたいと思っておる」

「いいわねー」

 真穂さんがうれしそうに賛同する。

「して、どんな人員が欲しいかおぬしたちの意見を聞こうというわけだ」


「はい!」


「こすず、発言を許可する!」

「超大金持ちで、快くお金をばらまいてくれるような人がいいです!」

「よし、帰れ!」

「ぶーぶー」

「次、静夜。希望を聞くぞ」


 指名された静夜は、少し考えてから正直な意見を口にする。


「より依頼を解決していくためにも、リーダーシップのある人物が欲しいところだな」

「何を言う、静夜よ。リーダーシップなど私がいれば何の問題もないだろうに」

「俺の目を見てそのセリフを言え」

 おたぬき様の視線は泳ぎまくっていた。一応自覚はあるらしい。

 と、こすずちゃんが手を挙げながら尋ねた。

「もしかしてあたしが選ばれたときも、こうやって事前に会議みたいなのをしたんですか? 美人でかわいらしくて愛嬌があって性格が抜群に素敵な子を希望したから、あたしが選ばれたんですか?」

「こすずが選ばれたのは事故だ」

「事故!?」

「それもひき逃げ級の」

「ひき逃げ級!?」

「話を戻すぞ」

「ちょ、ちょっと! 気になるんですけど!」

「ずっと気にしておいてくれてよいぞ」

「教えてくださいよ!」


 こすずちゃんは必死だったが、おたぬき様はにやにや笑みを浮かべるだけだった。

 静夜は経緯を知っていたが、口には出さないでおく。こすずちゃんはおたぬき様のお気に入りだった。


「あのー」

「お、真穂、新人の希望か?」

「はいー。できたらの希望なのだけど、次に入ってくる子も面白い子がいいわねー」

「『も』ってやめてもらっていいですか」

 こすずちゃんから抗議が飛んでくるが、真穂さんはにこにこしたまま言い直さなかった。


 おたぬき様が大きく頷く。


「もちろんそのつもりだ。次こそ依頼を解決してくれるような逸材が欲しいところだな」

「『こそ』ってやめてもらっていいですか」

 再びこすずちゃんから抗議が飛んでくるが、おたぬき様は不敵な笑みを浮かべるだけだった。


「というか」


 静夜が口を開くと、みなの視線が彼に集まってくる。静夜は少し間を置いてから答えた。

「次に入ってくるのは、男だよな? バランス的に」

「ふむ。つまり静夜は、女より男が欲しいと」

「誤解を生むような言い方はやめろ」

「となると、ここまで出たみなの意見を参考にすると、新人は『超お金持ちで我が強く人から失笑されるような男』がいいと」

「なんて最低なやつなんだ」

「任せろ! 私がうってつけの人物を探してこようぞ!」


 おたぬき様が浮かべる満面の笑みに、静夜は不安を感じずにはいられなかった。

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