第14話 おたぬき様の正体 その一
「そもそもおたぬき様って、何なんですか?」
とある日の昼休み。
お狸部屋で静夜が昼食を取っていると、同じくやって来ていたこすずちゃんがそんなことを尋ねてきた。
「何と聞かれれば、ぐうたらとしか答えようがないが」
当事者であるおたぬき様は、部屋の隅のソファーで心地よさそうに昼寝をしていた。
こすずちゃんがぐいっと詰め寄ってくる。
「静夜さん、もっと詳しいことを何か知りませんか?」
「そうだなぁ。うなじが弱点、とか」
「セクハラしたんですか。なんであたしを誘ってくれなかったんですか!」
残念がるこすずちゃんに、慌てて釈明する。
「本人がそう言ってたんだよ。あとはそうだな、一応世間的には、この予備校のトップの孫娘、っていう認識のされ方だろ」
「え、そうなんですか?」
意外そうな表情になるこすずちゃんに、静夜は頷きを返す。
「本気で神様だなんて信じてるやつの方が少ないだろ。俺もここに来るまでは信じてなかったからな。こすずちゃんだって実際におたぬき様に会わなかったら、信じてなかっただろ?」
「まあ、それは確かに」
「ただ俺も詳しくは知らないなぁ。真穂さんの方が詳しいと思うが。というかおたぬき様本人に聞いたらどうだ?」
「前に聞いてみたんですけど、『気にするなこの貧乳め!』と笑顔で言われちゃって」
「ひょっとして、案外、事実なのかもな」
「あたしはまだ成長段階なだけです」
「違う。おたぬき様のことだ」
「どういうことです?」
こすずちゃんが首をかしげる。
少しもったいぶるようにしてから静夜は答えた。
「神様なんかじゃなくて、ただ自由に動かせるたぬき耳を持ってて、妖術が使えるだけのトップの孫娘っていう話だ」
「では宣伝のために神様だと名乗っていると?」
「宣伝……になってるのか?」
普段からの依頼解決の惨状を考えると、とてもそうは思えなかった。こすずちゃんも何度も頷いている。
「確かにそうですね。宣伝の可能性はまったくないと思われます」
「何か別の意図があって、この部屋を設けてるとかか?」
「というと?」
何も思い浮かばなかった静夜は、この話を終えることにする。
「まあ、本人が気にするなって言ってるなら、詮索しない方がいいだろ。やぶたぬきだ」
「……それもそうですね、分かりました」
こすずちゃんはあまり納得していないような表情だったが、一応は頷くと話をそこで切った。
ふとおたぬき様の方を見ると、彼女は本当に幼い子どものように、心地よさそうに眠りこけていた。




