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乱歩の随筆集を

作者: 竹仲法順

     *

 読んでいる。実に重厚で、密度が濃い。ぎっしりと字が詰まっていて、単なる随筆・随想のレベルじゃない。あれは一つのれっきとした文学論、文芸評論だ。それぐらい乱歩は小説だけでなく、古今東西の作家の作品の批評に長けている。海外の作家の作品もそうだが、日本文学にも詳しい。

 個人的に乱歩の小説の方はそう魅力を感じなかった。読みやすいのだが、そう重厚でもなくサラッと読める感じ。それに大抵型が決まっている。明智小五郎と少年探偵団、それに怪人二十面相――、出てくる人間たちはほとんど同じであり、ストーリーも決まりきった側面が強く、そう惹かれることはなかった。

     *

 だが、随筆や評論となると、乱歩の右に出る者はいない。実に凄腕だ。あれだけ濃密なものを書くとなると、やはり違う。まさに本格派である。返って、乱歩は小説の執筆よりも小文の類の方を書くのに才能があったような感じがする。

 まあ、あの当時の文人など、今のように派手に部数が出ないから、ひたすら書いて原稿料を稼いだのだろう。悪いことはない。もちろん儲かっていた作家もいると思うのだが、それは極わずか。当時は推理小説じゃなくて、探偵小説の時代である。探偵――一般的に刑事以外で、捜査に関係する人間たちのことを差す言葉なのだが――が活躍するのだから、話も現代とは若干違う。

     *

 今でこそ、ミステリーとかハードボイルドっていうと、刑事などが出てきて、事件捜査に大活躍するのだが、大正末から昭和初期・中期というと、時代が違った。犯罪に美学があったのである。今のようにケータイやスマホなどないのだし、振り込め詐欺など、犯罪の<は>の字もないようなものは存在しなかった。人間の息吹や息遣いが聞こえるような作品が溢れていたのである。

 確かに古き良き時代だったんじゃないかな?乱歩や同時代の作家たちは皆、健筆家なのだし、今のように世相が仰々しいことはなかった。その点、現代社会は実に滅茶苦茶である。前述した振り込め詐欺など、犯罪でも一番チープな類のもので、何ら意味のない代物だ。それがまかり通る社会は、まさにそれこそ犯罪そのものだと言える。

 話を元に戻すが、乱歩の随筆は必読。前述したように、レベルはかなり高い。日本人なら誰もが一度は読んでおくべき本だ。それぐらい凄いものなのである。もちろん、投げ出してしまう人もいると思う。あまりの深さに。だが、読破した後は物凄い充実感を覚えるんじゃないかな?そう思っている。是非ともお読みいただきたい。ネット書店などでも売ってあり、手軽に手に入る書物なのだから……。

 ひとまず一筆書かせていただきました。

 ではまた。

                              (了) 


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