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侵略!エコ娘  作者: こまだ
第一章 ~邂逅~
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 ごめん、用事があってさ――


「あっ、出た。やっと出た。慎治てめぇえ!!!!」

「うわぁ!! なんだボイスメッセージか!?」

「はぁ!? ふざけたこといってんじゃねぇ! 起きろよ! いや、もう起きてもおせえ! 寝ろ! それはなんか違うか!」

 メッセージを送ろうとした瞬間に電話がかかってきた結果、俺は間違えて通話ボタンを押してしまったようだ。


「平和を守る為なら安かったさ……」

 やむなくプランAを発動する。千佳対策に編み出した俺の最終奥義だ。

「なにがだよ」

「…………言わせる……のか……?」

 重く、何かを失ったていで喋りかける。

「ったく。しかたねぇな」

 ――決まった。これが俺の最終奥義“適当にかっこいい感じのセリフを言う”だ。千佳はすごく単純な娘なのだ。

「おい、慎治何をぶつぶつと――」


「――――あ? いま知らねえ声がしたんだけど」


「む? 慎治はだれと話してるんだ?」

「てめぇがだれだよ!!!!」

 千佳は声を大にした。俺ではなくミラに投げかけるように言ったつもりなのだろう。すごく耳が痛い。

「なんだその好戦的なゴリラみたいな女は」

 火に油を注ぐ天才か!?

「だぁれがゴリラじゃい! 行くわ! 絶対いくわ!!! その女にゴリラパンチお見舞いするわ!!!!」

「いや! まてまて! 誤解だ!」

「知ってるよ! おまえんちは五階だろ!」

「いや! それも誤解だ!!!」

「なぁーにが誤解だよ!」

「俺達、今家にいないんだ……」

 ここから同情につなげれば、千佳相手なら誤魔化せるはずだ!

「親を殺され、借金取りから追われているミラをさっき匿ったんだ」

「ん? それはどんなフィクションだ。夜から一緒だろ私達」

「うぉぉぉぉぉぉおおい! 黙っとけよ! 宇宙人ゴリラ女! こちとら幼馴染のゴリラ女が来ないように話逸らしてんだよ!」


「大丈夫。もう家の前いるから」


 ガチャ…ガチャ。

 ドアが開けられようとしている。

 ガチャガチャ、ガチャ……ガガガガガガガガガガガッ!

「あっかねぇ!」

 ドア越しに確かに奴はいる。

 俺の幼馴染のゴリラ女が。

「激しい奴だな」

 宇宙人ゴリラ女は呑気に椅子に腰かける。

 ――刹那、室内に轟音が鳴り響く。

 現実でありえるのだろうか。

 防犯会社にもっとドアを頑丈にしてもらうように連絡を入れなければならない。

 ドアが壊れました……と。

「慎治!!! てめぇ!!!!」

「ひぃ!」

「女如きに何を怯えている」

「あいつはやばい!」

 とにかくやばい! 俺のピンチには大体あいつが関与している!!!

「へぇ、学校をさぼって女とイチャこらさっさと。しかも、相手は外人さんときたもんだ。幼馴染には平気でうそついて、お前の母から任せられたあたしの面を汚しやがって……」

「私はホルスト人だ」

 ミラが千佳の話を遮る。

「あぁ?! 知らねぇよ! そんな新しいカップめんみたいな人種聞いたことねぇよ!」

「わけあってこの地球に来たのだ」

「ほぅ?」


 そこから宇宙人ゴリラは俺にしてくれた話を、簡潔に幼馴染ゴリラにもわかるように説明し始めた。


「はぁ……つうことはホルストの希望なんだな」

「そして今日からここに住むことになった」

「わかった!」

「わかったの!!!???」

 納得するんだ! この人! 

「あたしの名前は假屋崎千佳! お前は!」

「私は……ミラ! ミラと呼んでくれ」

 あつく、つよく、互いの手を握り合う。

 そう、友情とはこのようにして生まれるのだと悟った。

 だめだ、なんだこの二人の波長の合い方。ゴリラ、ゴリラ同士の共鳴なのか!?

「気をつけろよ、ミラさん」

「なにがだ」

「こいつは男だ、襲われそうになったら大きい声で叫んで逃げるんだぞ」

「地球人の男は危ないのか?」

「ああぁ。獣だ。性欲が服着て歩いてるようなもんだ」

「すごい言われ様だな地球の男。そして一番危ないのは俺であることを忘れるな」

「こんな美女をお前と同じ屋根の下のほうがあぶねぇよ! 勘違いすんな!」

「六階から飛び降りたり、あきらかに車とかそんなのより重いようなものを持つ女が危なくないと!?」

「なにかあったらすぐ助けに来るから! あたしはミラさんみたいに飛んでこれねぇけど!」

 そう、無視である。

「うむ、すごく頼りになる。なんだろう、ホルストに居たときの戦友と通ずるものがあるな」

「あたしもなにかわからないものをビンビンと感じてるぜ……」

「ゴリラの共鳴みたいな?」

 二人一緒にこっち向く。さすが息があってらっしゃる。

「じょ、冗談だよ! 二人とも美人だからだろ!」

「冗談がすぎるぜ(ぞ)!」

 二人の足が残像を残して消え去ったと同時に、俺の両足から肉と肉がぶつかりあうなんとも痛い痛しい音が部屋中に響き渡った。

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