6
昼過ぎだからか、ここが半田舎だからか、人とすれ違うことなく家まであと半分くらいの場所についた。
「で、いつになったらつくのだ?」
「んーあと二十分あれば確実につくとおもう」
「それは地球人の歩幅に合わせた場合だろう? 私の歩幅に合わせろ!」
「俺は飛べません」
「では私が担いでいこう」
「いやいや、あんなぶかっこぉっぉう!」
何かを述べる暇さえも与えられずに、俺は地面とおさらばした。
結局運ばれて家にたどり着いてしまった。
しかも、玄関からではなくベランダから。
「もう、わけがわからないね! なんで玄関から出発してゴールがベランダなんだよ!」
「家にたどり着いたからいいだろう」
「そっっして!!! お前はくつろぎすぎだっ!!!」
俺の極上のくつろぎスペースでっかいソファを独り占めしやがって!!
「で、慎治」
「なんだよぉ!」
無視かよぉ!
「私の部屋はどこだ」
…………。
「あーもう、そこの部屋自由に使ってくれ」
「恩に着るぞ」
そう言い置いてミラはすたすたと今しがた自分の部屋となった場所へ歩いていった。
本来物置として利用している部屋だ。
布団もあとで出さないといけないなぁ、あいつ着替えとか持ってんのかな。
まぁそんなことはどうでもいい! とにかく今はすべて忘れて!
「ソファーにダイブだ!!!!」
質素な我が家の中で唯一他人に誇れるでっかいソファ。四、五人は楽に座ることができるだろう。そして何ならベッドより寝心地がいい!!
で、あるからして俺がダイブしてもこいつは暖かく俺を受け止めてくれる!!!
手の先を合わせ、伸びる、そう。
今の俺は棒だ。
そしてこの棒は伸びて伸びて伸びまくり、そのまま身長が1cmくらい伸びてくれればいいなと思う。
「ぶはぁ~~~~」
ふー。
なんて濃密な半日だったんだ。
正確には昨晩からだから一日くらいか。相変わらずガラスの破片は散らばったままだ。ミラは平気であの上を歩いてたけど。
音楽鳴らしっぱなしだったはずの携帯は充電が切れたのだろう、画面が暗くなっている。
コンセントに刺しっぱなしにしてある充電器に繋げ、電源を入れる。
数秒間起動中の画面が表示されてから、ブブーッとバイヴ音が鳴る。
俺はその光景に目を疑った。
着信履歴47件
スライドできるほどのメッセージ。
送り主は千佳、とだけ書いてある。
「う、うわぁぁ……」
恐る恐るメッセージを開いてみる。
おい! 起きろよ
初日から遅刻か?
おい! 無視か?
おーい、生きてるかー
生きてるのに返事してないなら殺すぞー
心配してくれる優しき幼馴染である。
ピコン。
いまからいくよ?
…………待て。こいつ俺が既読つけた瞬間にこれだぜ。見張ってたのか?
そんなことよりまずい。まずすぎる。
入学式もほったらかして、家には知らない女が居て、砕け散ったガラスの破片とかもう状況がおかしすぎる。
とりあえず、返信せねば!!!