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侵略!エコ娘  作者: こまだ
第一章 ~邂逅~
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2

 頭がぼんやりと覚醒し始める。

 昨日の夢はえらくリアルで、尚且つ鮮明に思えている。

 うっすらと瞼を開くと、いつもとは違う光景を目の当たりにする。

 赤みがかった金髪に凛とした赤い瞳。透き通った白い肌に相反するように存在するぷっくりとしたピンク色の可愛いらしい唇。神がオーダーメイドして作ったかのように思える女性、ミラがそこにいた。

「おっ、血圧が上昇、覚醒ってやつね」

「どうやら、俺はまだ寝ぼけているようだ」

「ったく、どんだけ目覚めが悪いのよ地球人は! とりあえず地球人の睡眠状態をよく観察させてもらったぞ!」

 いいかげんおきろよおれ! 学校に行く時間だぞ!

「口元をにやにやさせながら、言語になってない言葉をぺちゃくちゃぺちゃくちゃと。寝返りは七回、寝ている間にあくびを三回していたぞ!」

「お前寝てないのか?」

「そうね、観察してたし」

「つぅか、なんでおれ裸なんだよ!!!」

「服脱がされてる時点で気づけないなんて愚かな人種」

 ミラは鼻で笑う。

「たしかにそうだけども、脱がせる意味あるか?」

「基礎体温、脈拍、血圧、呼吸数、入眠から覚醒までの時間、筋肉の弛緩、脳の活動領域、意識の有無などなど、寝てるだけでこんなに観察するべきところがあるわよ」

「こええよ!」

「ごちゃごちゃ言わずに観察されなさいよ!!! ほんっと! 無駄口が多いわね、地球人って!」

 腕組んでムスッとしてる描写

「ともかく、慎治には地球人代表として観察対象及び、実験対象になってもらう!」

「いやだよ!」

「どうしてだ!」

「はい、喜んで! って言う程特殊な性癖は持ち合わせてねえよ!」

 冷静に考えたらこんなに会話の続く夢っておかしくね? 普通に寒いし。

 そしたら俺は、不法侵入、変態、わけのわからない女と会話してるのか……。

「おそろしいわね……」

「なにが?」

「こんな生活しているやつが地球にはわんさかいるってことでしょ……よく滅びなかったわねこの惑星……」

「おまえは一体何を言っているんだ……てか、地球人、地球人ってお前も地球人だろ!」

「いや、私はホルスト人であって、あんたのその、なんだっけ? チュウガク? からは来ていない」

 わかった、この人やばい人だ!! そうと決まれば話は早いッ!

 勢いよく布団を蹴り上げ駆ける。

「は!? どこへいく!」

「だめだ、だめだ、だめだ! これは夢じゃない、夢じゃないんだ!」

 咄嗟にサンダルを履き、俺は勢いよく玄関を開けて外へ駆け出す。

 廊下を少し走った先のエレベーターの電光を見るが二階でストップしていた。

「地球人は逃げるのが好きなのか!?」

 やべえ! あの変態のことだ。何持ってるかわからねえ!

「階段しかねえッ!」

 引っ越してきてから使ったことのない階段を駆け下りる。

「普通に考えて警察に行った方がいいのか!? これは!」

 計算だとここは二階、あいつが追ってきている様子はないが、このままどうする。考えている間に階段を降り切り、開けたスペースにたどり着いた。

 エレベーターの電光は三階から二階に数を下げている。

「やばい! あいつがくる!!!」

 落ち着け! とりあえず警察だ! 変な女から脱がされて観察されていたって言えばいいんだ! 不法侵入者に人権なんてねぇからな!!! 俺は逃げるぞ!

 ロビーの自動ドアを抜け、しばらく走ったが立ち止る。

 確かに見える、俺の部屋から赤い金髪が覗いている。

「おいおいおい、なにしてんだよ!!!!!」

 ミラは「よいしょ」と言わんばかりに柵に乗り上がり仁王立ちをはじめ――。

「――あっ……」

 人生でこんなか細い声が出たことがあるだろうか、ミラは風に任せるように身を投げ出した。

 なにもできなかった。

 ただ、その場に立ち尽くしてその光景を瞬きもせずに見ることしかできず、なんのアクションもなくただただ、人が落ちていく現実に、呆然とする。

 ミラはゆっくりと空中で姿勢を逸らし、空で上体を捻り、回転した。

 かろやかに足から着地し、俺はその光景から目を離すことができなかった。

「た、体操選手かよ……」

 六階から飛び降りたそいつは、ゆっくりと俺に歩み始める。

「話はまだ終わってないぞ」

「お、お、おばけぇえええぇぇえぇえぇえええ!!!」

 俺は一目散に走った。

 後ろなんか振り向く余裕もなく、ただ走る。

 ――――――

 ――――

 ―――

 どれほど走ったかはわからない、だが、考えを整理できるほどの余裕はできてきた。

 なんで、俺はこんな目に……。

 なんで俺はわけのわからない不法侵入変態体操選手から追いかけられているんだ!

 なんで、なんでと疑問ばかりが脳内に湧き上がる。


「どうして逃げるのよ」


 耳元で囁かれた声に、背筋がぞっとした。

 振り向けば、ミラはぴったしと俺の背中に並走している。

「地球人の持久力はまぁ、そこそこ。スピードが圧倒的に足りないし、走るフォームもなってない。やはり無駄が多い。っと」

 またもや、変なメモ帳に何やら書くそぶりを見せる。

「で、さっきから質問に対する答えが返ってきてないのだけども?」

 俺は足をゆるめると、ミラもそれに合わせてスピードを緩め、振り返る。

「慎治はなぜ逃げるの!」

「追いかけてくるからだろうが!」

 ミラの遥か向こう、赤いサイレンを付けた白と黒の車、そう、パトカーが目に入る。

「へへ、ここまでだぜ変態体操選手!」

「はー? なんのこと?」

「もう少しでお前は連行されるんだよ!!! おーい、こっちだぁぁぁああ!!」

 俺はここにいる、ここにいるぞ! と言わんばかりに自分の存在を腕を大きく振りアピールする。

 ゆっくりと近づいてくるパトカーに安堵する。

「連行? なんのこと?」

「いいか、よく聞け! ホルスト人! ここ地球の平和を守る組織、警察が、平和を乱すお前みたいな危ない奴から市民を守ってくれるんだ!」

「いわば、守衛みたいなものね」

「ふふふ、何が狙いかは知らんが、お前のたくらみもここまでだ!」

 パトカーから二人の警官が降りてきた。

「うっひょー! かっこいいぜ! こりゃあ、相当な訓練を受けてきた精鋭だぜ! どんなマジックを使って六階から飛び降りたかは知らんが、ここで終わりだ!」

 警官に駆け寄り、ミラを指さす。

「よかったおまわりさん! こいつを! この女をどうかしてください!」

 警官はゆっくりと俺とミラの間に割り込む。

「大丈夫かい?」

「大丈夫じゃないです! この変な女が僕のこと追いかけ……て……」

 あ、あれぇー? なんでミラに大丈夫なんて聞いてるの? あれぇ? 

「きみさ、裸はだめだよ。外国じゃないんだから、学生さんかな? 学校は? ちょっといろいろと聞きたいことがあるから署まで来てもらうよ?」

「えっ、ちが!」

「うんー。やっぱパンツ一枚っていうのがね、よくないね」

 その言葉に、自分の姿を思い出す。そうだ、ミラに服を脱がされてたんだったあ!

「違います! 僕は必死に逃げてきただけです!」

「うんうん。そういうのも署で聞くからね」

「本当なんです! その女から必死に逃げてきて……!」

「だから、署で聞く、からね?」

 警官は俺に手を伸ばしてくる。

 俺はその手を弾いた。

「き、きさま! 暴れるのか!?」

 警官の腕は荒々しく俺を掴む。

「痛っ」

「暴れると許さんぞ! おい、その子を……」

「うっごっ!」

 何をどうやったかはわからない。

 ミラの前に居た警官が宙を舞い地面に落ちた。

「なんだ、地球はこのような貧弱な者が守っているのか?」

「大人しくしろ!!」

 倒された警官を尻目にすぐさま、ミラに手を掛ける。

 が、華麗に躱す。

「遅いな。訓練はしている、型はできているが実戦経験が乏しい。っと」

「なんだとぉお!」

 警官の顔は真っ赤になり、掴んだら数発殴ってやろうとの勢いで掴みかかる。

「結果。個人戦闘データーは取るに足らず、だな」

 メモをしまうと、呆然と立ち尽くす俺の元に歩み始める。

「こんなことして、貴様ら逮捕してやる!!!」

 まるで、後ろに目があるかのように手を避ける。

「くっ……! まずは、お前からだ!!!」

 真っ直ぐに俺の方へと向かって来る

「うぉぉぉぉお?!?!?」

「うぉぉぉおおおおおおおおお!!!」

 俺と警官はそれぞれ違う雄叫びを挙げあう。

「うっぷッ!」

 勢いよく走ってきた警官は襟首を掴まれくの字を描いて後ろへと投げられる。


「こいつは私のだ」



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