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侵略!エコ娘  作者: こまだ
第一章 ~邂逅~
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 つきっぱなしのニュース番組。

 鳴りっぱなしの音楽にライトに照らされる漫画の山。

 そして、砕けて散らばるガラスの破片と、土足の女。

 俺は、パンツ一枚でその光景に安堵した。

 …………

 ………

 ……

 …

 ――パリィン。


 もの凄く近く、壁一枚隔てた空間で何かが盛大に割れた。

 俺の頭の中で、いろいろな考察がよぎる。

 食器棚から、どうしてか落ちてしまった皿。

 はたまた、六階のこの部屋にベランダから侵入してくる超エキサイティングな泥棒。

 もしくは、一人暮らしの、助けを呼んでも誰も来てくれないという事実を踏まえたうえで、俺を驚かせにきた幽霊。

 まず一つずつ消去しよう。

 ……俺、今日食器棚開けてないんだよなぁ。てか、落ちるほど手前まで皿とか入ってねぇし。一人暮らしの食器の必要の無さ舐めんなよ!

 ということで、食器棚説は薄い。

 そして、六階までわざわざ上がってくる泥棒とかいねぇもんなぁ。ここまでくるなら二階の藤本さん家のほうが絶対入りやすいもん。

 ……はぁ、あれ絶対幽霊とかそういう類のやつだろ。

 せめて、ちょっぴりドジっ子な幽霊であってくれ。

 怖さを半減するために余分な付け足しをしたが、幽霊は幽霊に変わりない訳であって、結局のところ足がなくて、空飛んで、ホラーな顔してるんだよなぁ……。

 ……って!!! わけのわからないこと言ってる場合じゃねえ!!! 俺が動かなきゃ誰が動く!!!

 今の俺はクール、スマート、そう、できる男! 幽霊なんて怖くない!!!

「行きます!!!」

 勢いよく、浴室のドアを開ける。

 タオル片手に体の水しぶきを拭き、リビングへ向かう。

 扉の前で、一つ深呼吸。気合をいれ、扉を一気に開け放つ!

 扉を開けたそこには、真っ暗な部屋にテレビの明かり、携帯から流れる音楽、砕け散ったガラスの破片、そして、ちゃんと足のある女。

 6階建てのベランダから何の躊躇もなく土足で上がりこんだ女性は、赤みがかった金髪を払う。髪のヴェールを失った瞳が、紅の光を放ち、俺の目を捉える。

「こんばんは」

 に、にんげんだぁあぁあああああ!!!

「ん? この地帯の言葉はこれであってるはずなんだけど……聞き取れる?」

 よかった! まじでよかった! ホラーな顔面の人出てきたらどうしようかと思ってた!

「あれー、聞こえてる!?」

「あ、え、はい!」

「聞こえているなら返事くらいはっきりしなさいよ!」

 ん。てか泥棒で喜んでるけど、泥棒が目の前にいるこの状況っておかしいよな。

「また、無言……地球人のコミュニケーション能力はひどく欠落している。っと」

 一体何を言っているんだ、この女は。

「で、あんた名前は?」

「お、岡山田慎治」

 やべえ、反射的に名乗っちまった。

「ふーん。これからよろしくね、しっかし――」

 ……だめだ! おれの理解をマッハの速度でぶっ飛んでいきやがる!!!

「無駄なエネルギーが多いわね」

 よし、状況を整理しよう。

「待機電力もバカにならないってのに……」

 まず、誰だコイツ!

「うわっ、こいつライトもつけっぱなしでどこかにいってたの!?」

 どうやってここに!

「ほんっと。あれも無駄、これも無駄。無駄しかないの? 無駄の天才なの? 地球人は!!!」

 天に訴えるようにオーバーなリアクションをしている女。

 どうして、泥棒にうちの家庭事情突っ込まれてんだ!

「あんた、話聞いてる?」

「名前教えたんだからそのあんたってのやめろよ!!!」

「あっ、そういうところ気にするんだ。意外と几帳面。っと。」

「俺は名乗ったんだから、あんたも名乗るべきだろ!!」

「確かにそうだな、私の名前はミラ、見ての通りホルスト人だ」

「どっからどう見ても地球人だろぉおおおおお!!!! どうやって処理すればいいんだよ! 面白い回答なんて浮かばねえよ! 突っ込むところが多すぎるわっ!!!」

「そう。じゃあ、突っ込みどころを突っ込んでみたらどう?」

「なんかそんな感じで言われると熱が冷めるわ!!!」

「なら言わないでよ、地球人って自分のエネルギーすらも無駄遣いするの?」

「おうおうおう。黙って聞いてりゃあ! いいだろう! まず、人様の家に忍び込んだらだめだろ! 変なキャラ作ってその場を逃げようなんて無駄だからな! 泥棒なのか? 泥棒なんだろ!? そもそもお前地球人だろ! そういうあたし、君たちとは違うから……ってのは中学卒業時に思い出として置いておくもんだろ!」

「だからちゃんと、これからよろしくって言ったじゃない! そういうところは細かいのね! キャラじゃないし、私はホルスト人ですから。 中学? なにそれ、私わかんない」

「ホルスト?! 設定ごりごりだな!」

「惑星ホルストを知っているのか!? 地球人め、侮れんな……」

「……おっけい。わかった。わかったよ。そうか! そうだな! ……これは夢なんだな! 夢なんだろ! ミラさんよ、一人暮らしの寂しさを紛らわせてくれてありがとう! 俺は寝るわ!」

 じゃっ!。と手をかざし、部屋へと向かう。

「特に何もしてないけど、疲れてるんだろうな、俺」

 ほら、明日は入学式だし。極度の緊張でこんな夢見てるんだろうな。

「慎治、どこへいく」

「寝るんだよ! 夢の中だろうとどこであろうと俺は寝るんだ!!!」

「なるほど、睡眠をとるのだな」

「そうだよ! 服着て寝るんだよ! そしてこの夢から覚めるんだよ!」

 その後もミラとやらは何事か喚いていたが、いっさいがっさいを無視して部屋に戻り、俺はベッドにダイブした。


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