11 八日目。青森(4)
左折したときから気づいたことですが、この道、ずっと下り基調の道だったのでした。スピードが出ないよう、手綱を引きつつの走行です。
国道103号、別名、十和田ゴールドライン。辺りはずっとブナの原生林です。それも、スケール大きく、樹海です。大自然の中を行く道でした。これが昼間なら、そうとう快適なルートに違いないはずです。今は街路灯もなく、闇夜の難路。唯一の希望は、この先に大都市、青森市が待っている、ということだけでした。
左折から数分後(?)、県道122号との分岐点に到達しました。その、ライトに照らされる路面を見ると、ダートであり、暗黒です。
当初の予定のテーマ“まっすぐ”のためには、この県道に進まねばなりません。
(青線:予定ルート。現在、国道394号から国道103号に到達)
(分岐点拡大図)
危険と判断しました。このまま、この国道103号を進みます。
そう告げると、闇の中、蘭が、ホッと息をつくのが感覚できたのでした。なんだか申し訳ない気持ちになりましたが、ですがそれもこれも夢の中の出来事のようで、もはや何が現実か、感覚が及ばなくなってきているのでした。
本当に蘭に声を掛けたのかすら怪しく、ともかくも二人は国道を下り始めたのでありました。
もう、意識が切れぎれです――
ひたすら暗闇。
寒い。蘭、ずり落ちかける。疲労、甚だしく――
明治陸軍・第八師団、歩兵第五連隊の行進を、うつつに目撃し――
遠くの空で、人間が眠っていることをいいことに、ねぶたの巨大キャラたちが、自由に踊り戯れていました。
笑います。もうだめかもしれないと。
断片的な意識の中、そんな思いが支配的になってきて――
何度目でしょう、もう本当にだめだ、と思ったそんなときでした。
林をすかして、向こうに、その街の灯がいきなり見えたのです――!?
思わず駆け足に――そして、見晴らしのいいカーブ地点。林が切れて、高所からの大眺望――
眼前に広がる、青森市の灯。それは、ゴールの街の灯だったのでした!
美しく、美しく。美しく、美しく――
ぼくは蘭の肩に腕を回し、蘭はぼくの腰に腕を回し――
涙し――
しゃくり上げ――
これまでの苦労は、もう、いつのことだったか。永劫の過去のできごとで――
ついに、来た!
その思いで、胸が膨らむほどの高揚感に包まれたのです。




