10 七日目。秋田・青森(12)
森吉山林道を走りきり、県道309号に到達したのが午後3時前です。辺りは外灯などない、深い山の中です。
「すみません、急ぎましょう」
「お気遣いなく」元気いっぱいな蘭でした。
そういうわけで、太平湖は横目で眺めるだけで、過ぎ去ります。
途中、県道22号、国道285号と繋ぎ、国道103号大館市入りが午後6時前でした。
コンビニでお茶休憩です。そこの飼い犬でしょう、かわいい仔犬、赤毛のアキータ犬の頭をなでながら、ジュースを口に運びます。
「――時間が、かかってしまいました」
「もし、現世だったら、当初の十和田湖入りというプランは、実現は無理だったかも、ですね」
「さすが魔王様……って、ぼくの計画の方が大甘だったんですね。山を舐めてました。すみません。とにかく、今日中に青森県に入っておきたいのですが……」
「気にしないで。了解です!」
という会話を交わし、未練げに犬にバイバイし、国道7号に乗ったのですが、一山越えてきた身に、また矢立峠(標高258m)越えは負荷がひどく――
太陽は、午後いっぱい西空に弧を描くように運行していたのですが、今。地球中心の裏側(?)に向かって、滝に落ちるように、あるいは穴に吸い込まれるように、するすると流れるように目に見えて細くなり、小さく消え入ろうとしています。
夕暮れの訪れです。心が弱くなり――
地図上の距離と、実際の距離は、なぜこんなにも違う物なのかと、もうこれで何度目でしょう、また思い――
標高はさほど高くはないけれど、その分だらだらと長い、長い峠道。
ついに心がくじけて、妥協。
峠直前の矢立温泉にて、本日の走行を終えたのでありました。
(図はイメージ)
午後8時です。
ラインにして約578km。つまり本日は、56kmだったのでした。
あと、47kmです……。
ちなみに、来る途中、周囲が暗くなってからのことです。
コン吉、そしてケンケンの両眼が光るのを、この旅を通じて初めて知り、行は思わず胸躍らせてしまったのでした。




