10 七日目。秋田・青森(9)
「はい、見方によっては、そう言えないこともない、ということです。
ここで花子さんの“まっすぐライン”を見てみましょう」
(図はイメージ。緑線:等角航路 赤線:大圏航路。それぞれのまっすぐライン)
「等角航路の北側に、山なりになった大圏航路があります。このように、日本において、等角航路と大圏航路の差が一番大きく出るのは、東西ルートです。
これがだんだんと傾いていき、南北ルートともなれば、2本とも経線に重なって差がなくなってしまいます。
逆に経線に重なっていなかったら、目立たないけど、ずれはあるのです」
「つまり、わたしたちのそれぞれのラインにも、二つの航路の差異が生じている、と……?」
「さすが、ラン。察しがいい」
(図はイメージ。緑線:等角航路 赤線:大圏航路。それぞれの蘭のまっすぐライン)
(図はイメージ。拡大図)
「……」
言葉を失ってしまった蘭でした。行は、ここで、昨夜寝ずに考えたアイデアを披露したのです。
「“まっすぐゾーン”のあるフラットランドは、メルカトル図法が支配する世界でした。
そこでは2点間を直線で結ぶと、等角航路になります。
対して“ここ”では――
“現世”と同様、2点間を直線で結ぶと、大圏航路になるという世界です。
いえ、目的地が水平線(地平線)の向こうに隠れてしまう現世よりも、こちらの真の異世界の方が、より相応しい大圏航路の世界だと言えるかもしれません。
なにしろこの地では、ゴール地点が丸見えだから。
極星と対面地点で、自位置が簡単にわかるから……。
これでは、たとえ大昔の帆船時代であったとしても、メルカトル地図も等角航路も、息する余地すらなかったでありましょう」
「……」
「ぼくは、確かめてみたんです」
「……」
「この地では“阿仁マタギ駅”、現世では“ 笑内駅”。その地点は、どうだったのだろうと? それがこの図です」
(図はイメージ。破線の右側領域が、大圏航路のラインを基にした新ゾーン)
「ご覧の通り、フラットランドではゾーンの外に出てしまっていますが、コンケーブランドでは、かろうじて、ゾーン内に入っているのです。これが、まだ希望を捨ててはいけないと考える根拠です。
ぼくは心底思っているのです。きみが、ぼくの方へ、北の方へやって来てくれてよかったと。これが、ぼくときみ、立場が逆だったら、もう絶望しかなかったところです」
「でも――でも!」
蘭がこのときばかりは激しく反駁したのでした。
「そんなご都合なこと言ったって、現実はどうしようもないじゃん! わたし達、マジ、ゾーンアウトしちゃったんだよ!? かつて、30年の歴史で、未だかつて誰も生還を果たせずにいる状況に陥ってしまったの! 解ってる? その犠牲者の中には、サヴァイバルのエキスパートである、わたし達よっか遙かに、遥かに優秀なメンバーだって沢山、いたんだよ! 本当に解ってる?」
最後は涙声です。
「解ってる! 説明する! ――とりあえず、下山をはじめましょう」
もう後には引けません。力を込めて、言葉にする行なのでした。
「――魔王退治です!」




