10 七日目。秋田・青森(6)
「さて――」
行は心穏やかに主張の口火を切ります。
「――どこでもその場から、全宇宙が一望できる。まさに、こここそは神の御座なのでありましょう。物凄くダイナミックであり、同時に、壮絶な美を有していると評したいと思います。その度合いは、ここに居住してもいいと思ってしまえるくらいのものです。が――
それでも。
ぼくたちは、元の、ぼくらの世界、現世に、生還したいと願います」
「はい、わたしも、そのように希望します」
「ならば、ぼくらは今、ピンチに置かれていると考えてもよく、こんなときは、頼りになる人に、堂々と縋っても許されるでしょう」
「どうぞ……」
行は、改まってその名を口にしたのでした。
「木藤文太郎です」
行は続けます。
「文太郎さんこそ、頼りにすべき人物です。
日本の異世界探査史30年の歳月が生み出した、最高傑作。
近頃は花子さんの躍進、目覚しいものがありますが、それでも。旅人界の第一人者と言ったら、文太郎さんをおいて他にありません。彼こそは、ぼくたちのエースなのです」
「勇気が沸く思いです」
「文太郎さんだったらどう行動するだろう? そしてどのようにこの難関を克服し、生還を果たすでしょうか?
文太郎さんを基準に考え行動することを、これからの旅の基幹にしたく思います」
「期待に興奮で体が震えるのを感じます。了解です。とことん、やりましょう」
二人は覚悟を確かめるように頷きあったのでした。




