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10 七日目。秋田・青森(4)

 地球大気の厚さは10000メートル(10km)、とも言われています。

 ということは、この外国の光景はどれも、一旦はこちら側の大気を飛び出して、そしてあちら側の大気に視線が飛び込んでのものであり、すなわちその間の空間は、理屈的に、“真空の宇宙”なのでありました。


 観察者のいる大地を基にして、太陽が浮かび、月が浮かび、太陽系、銀河、銀河団が詰め込まれているのです。

 仮にロケットでこの地表を離陸し、宇宙に飛び出て、中央付近のどこかに浮かんであるのだろう火星に降り立ってみたとする。しからば、今度は火星を基準に、その人にはこのように宇宙が見えるに違いありません???


 富士山に視線を向けます。

 その円柱の頂上は宇宙に飛び出ています。故に最適なスケール替わりになり――どうです!?

 富士山のその有様をよく見ると、一定であるはずのその直径の、見た目の細まり具合から、指数関数的にスケールの目盛りを細かくさせて行っていることが理解できます。これはどういうことなのか?

 またロケットで地球を飛び出してみましょう。今度はこの、凹曲面地球空間の中心・極星(光がそこから()()()ので“黒い星”あるいは“黒い太陽”のように見える)に進んで行くことにします。すると、中心に近づくにつれ、そのロケットの大きさは、搭乗員の自覚なしに、搭乗員ごと、どんどん縮んで行き、地球の中心において、ゼロになるはずです。地表からそのロケットを観察すれば、中心に近づくにつれ速度が遅くなり、中心付近で永遠に止まって見えるようになるはずです。その意味で、中心点は、無限の彼方にあるのでした。

 地球の直径約12742km、その有限の空間の中央に、全宇宙を詰め込んだ、有限でありながら、その容積は無限という凹曲面球体。ここはそういう世界だったのです。


 ブラジルは夜だから暗いのでした。ですが、太陽はあそこに“確かに”あるので、今のブラジルからも太陽を視認できるはずです。

 地球の中心を通して見れば、の話ですが。

 超々高性能な宇宙望遠鏡を使って“中心”を観れば、その中心を通して、“無限の彼方”に、言わば“裏太陽”を見ることができるでしょう。

 逆に、今、ブラジルの空には月が浮かんで見えているはずで、その月を、ここからは、やはり地球の中心を通して見れば、その永遠(とわ)の果てに、普通なら絶対見えるはずがない、“月の裏側”が見える、というコトなのでした。


 わかりません!


 ロケットで“外”に飛び出したら、その過程で地球はどう変化して見えるのでしょうか?

 そもそもロケット内部はどう見えているのでしょうか?


 わかりません!


 ただ――

 今、この瞬間に、です。

 地球の地平線は、ぼくの足下に集中していたのでした。

 全宇宙の、表も裏も見えていたのでした。

 ということは――

 ああ正に、この世界こそが、こここそが、“神の視座”、なのでございましょう……。

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