10 七日目。秋田・青森(3)
行は一回転したあと、改めて北を向き、視線を正面に向けたのでした。
正しく、体の軸線と直角になるようにして。
そうやって見るその光景は、足もとから――
北は、樺太が迫り上がって見えたのでした。
東は、太平洋が見えたのでした。
南は、沖縄が、迫り上がって見えたのでした。
西は、ユーラシア大陸が迫り上がって見えたのでした。
首を上げていきます――
北は、樺太からオホーツク海、カムチャツカ半島、シベリヤ、真っ白な北極海と迫り上がり、グリーンランド、そして北大西洋の海面と展開し――
東は、巨大な太平洋が一面に広がり、そしてあそこら付近に、ハワイ諸島があるのでしょう。
南は、東南アジア諸国、上下逆さまにオーストラリア大陸、そして不気味な南極大陸と迫り上がり――
西は、これは圧巻、中国、インド、アラビア半島と連なり、アフリカ大陸を横断して――
二人は天頂を見上げます。
――そこには、南アメリカ大陸、日本の対極、ブラジルが、配置されていたのでした。
青い空の、分厚い空気の底に沈むがごとく、薄く白く、真昼の月のような色合いの、“夜”のブラジルだったのでした。
いま、正午近くです。
この“球”の“中心”から少し南に外れた宙域に太陽が輝き(本来の角度の位置?)、それを通り越して、夜の、暗闇に包まれたブラジルがあったのでした。
今、日本は昼なのです。と言うことは、反対側のブラジルは夜なのです。だから、これで合っているのです。
地球。直径、12742km。その大きさを、今はじめて実感する。これこそ、異世界、その真実の姿でした。
“まっすぐゾーン”では、旅人は、何らかの理により、日本国土限定で、無限平面世界としての知覚しか認められなかったものが、ゾーンアウトしたことにより、そのリミットが解除され、全貌を現した、その姿だったのです。
地球の曲率が、逆転した、世界!?
“まっすぐゾーン”があった世界をフラットランドと呼ぶならば、現世の地球はさしずめ凸曲面世界。
そしてこここそは、凹曲面世界。
そう呼ばるるに相応しい、世界だったのです。
嗚呼、世界は、宇宙は――
・現世。凸曲面世界。
↓↑(ワープ)
・フラットランド。異世界の限定領域。
↓(ゾーンアウト)
・異世界。凹曲面世界。
こういう、全体構造であったのでした。




