9 六日目。秋田(4)
峠を少し越えた時点で、再びパムホを確認します。
思ったとおりでした。
蘭の光点は、県道から国道105号に入って、南側すぐの、“左通駅”にあったのでした。
正確には、地図の駅舎位置よりも、ちょっと北側にずれています。
ずれ……。
少し――胸が疼くのを感じます。
考えられることとしては、ときおり起こるという、衛星の仕様、です。
あるいは、この世界では、本当に駅位置が、北にずれているかです。
北側にあるということは、「より県道に近い」ということで、だから蘭は、上桧木内駅ではなく、左通駅を選んだ、のかもしれません。
ということは――?
このとき、行は自分の位置を確認することで、推測を検証することができたはずです。が、蘭の行動に夢中になってしまい、つい怠ってしまったのでした。
――つまりです。蘭は、“秋田内陸線(秋田内陸縦貫鉄道)”を利用するつもりなのです。
またしても行の顔に微笑が広がります。
当たりでした?
(図はイメージ)
これで“阿仁マタギ駅”に降りればどうでしょう――
宣言どおりに。
体力を温存したまま。
国道を行くよりも、より安全に、ゾーン内にいたまま。
先に登山道入り口にて、行を待ち構えることができます。
「フフッ」
ケンケンを使わず電車を利用するのは多少ズッこいのですが、“行に追いつく”ことと“体力差”のことを勘案すれば、喜んで認めるしかないでしょう。
行は今、幸福感にも似た寛容な気持ちでそう考えていたのです。




