8 五日目。山形・秋田(5)
雄物川ぞいの道、風光明媚な県道36号でした。
「いえいえ、なんと素敵な秋田行になったものですねェ♪」
わざとらしいセリフです。
フンフンふふんフーンと、鼻歌まで出ています。
王様の命令権どころか、それプラス、本来なら蘭の物になるはずだった、“からかいのネタ”さえも、手に入れてしまったコオくんなのでありました。
「ぶっすーーーっ」
逆に、声に出してまで、ふくれっ面をアピールする蘭なのであります。
「ぶっすーーーっ」「ぷックック……」
あのあと、再リンケージしたパムホで互いにルートを確認し合いましたが、双方とも不正なし。GPSログを早回しのアニメにして、ラリーを再現させもしましたが、競争中の行動にも異常はないと認め合ったのでした。
結論として、これはもう、純粋に体力の差というもので、どうにもクレームの付けようがない彼女だったのです。
そゆわけで、
「――もう! 秋田キライ!」
といじけるしかなかったのでした。
「アハハハハ!」
「キミに替わって、県内にいる間中、ネチネチくだを巻いてやるから」
「じゃあぼくも、きみに習って、もう一勝負提案するとしますかなァ?」
「ぐう……!」
「ぼくに勝てたら、その権利で、ぼくの命令をキャンセルしたらいいんですよぅ。ということは、別に取り消さなくてもいいってコトだよぅ。別個に絶対的命令権を手に持つことにより、対抗手段とすることができるってことでぇす。攻撃的防御。……どうです? 興味がわいてきたでショ」(笑)
興味を覚えて提案に乗ってしまったら泥沼です。そこは理解している蘭でした。
「ぐう……!」
「おなか空いたの?」
「今に見てらっしゃい!」
「なーにして貰おうかなぁ……ウフフ!」
「ぐう、ぐぬぅううう!」
というわけなのでありました。
一方的に行の立場の方が楽しそうではあります。(笑)
ところが――
流石は蘭で、彼女は彼女で、賢くも状況を優位にひっくり返すべく、このときから策を巡らしていたのでした。




