8 五日目。山形・秋田(4)
滝のような汗、荒い息――!
コン吉の疲労は全て行のものなのです。ここに来て酷な坂道でした。
もうブラックアウト寸前、喘ぎ、空気に溺れそうになりながら、そうでありながら――
頭はかえって冴え渡り――
やっぱりこの賭けは、雰囲気が悪くなった場を、盛り上げ直すためのランの苦心だったのだな、と行は反省したのでした。
「フホ、フホ、フホ――ッ! フホ――ッ! フホ――ッ!」
ですが、それはそれ、これはこれです。フホ――ッ!(笑)
多分、負けるのでしょうが――
フホ――ッ!
順当に負けて無難にコトが落ち着くトコに落ち着くのでしょうが――!
一縷の望みに、鼻先のニンジンに、全力を掛けるのが、男というものでしょう!
今後のからかいのネタにするというのなら、それでいい。ならば、せいぜいビッグなネタを提供してやるさと、自分を叱咤し励ましコン吉を走らせて――
「――」
ついに、国道398号――
「――があああっ!!!」
雄叫びとともに羽後町役場前を走り抜けたのでした。時計にして約2時間10分。ところが――
「――!」
そこに蘭の姿がなく――
そんなはずはない、何かトラブルかと一挙に不安にさせられた目の端に、国道の曲がり角から、汗みずくの蘭が現れ――息も絶えだえにゴールするという劇的なドラマにて――
「――」
「――」
呆然と見つめあう二人です。
大番狂わせ――
蘭が、本気で頭を抱えました――
行は、自然と体が動いた、両腕を振り上げる、ガッツポーズです――!
――世紀の対決は、ここに非の打ち所なく明確に、決着を見たのでした。




