8 五日目。山形・秋田(2)
山道です――
キツネたちの足取りも重く(エネルギーは人間持ち)、森の中は風通りも悪く、二人とも汗みずくでした。
ようやくに辿り着いた、雄勝峠。(注、現世の旧道は通行止め)
例によって青看板が立てられていて――
『よくキータ! アキータ県』
とあったのでした。
「一言ダサい。安直すぎる! これだから、まったく……」
つい、そう愚痴をこぼしてしまうのでした。蘭が不思議そうに聞いて来ます。
「どうしたの、そんなにプリプリして? らしくない」
「失敬、う~~ん……」
行は、少し釈明しておこうと考えたようでした。
「昔、ひどい体験をしたことがあるからです。ですから、この県に関しては、ぼくは少々、シンラツに、事に当たるかもしれません」
「あらまあ(笑)」
「だいたい誠実さに欠けるんです。※だって、※の麓だって宣伝してしまって。アレじゃまるで※じゃないですか。そんなんだから、二度と誰も行かなくなるようになるんです。そもそも当時の※の名称も※を最有力候補にあげてしまうなんて、当の※から『いかがなものか』とクレームがつくの当たり前じゃないですか。なにシレッと※取りしようとするのです。※を知りなさい。そういう、人として※的なことを※ろにしてるから、産業も根を張らず、人材も他県に流出してしまうのです。このままだと永遠に※字県のままですよ――」
「まあまあ、そこら辺で――(笑)」
蘭としてはそう宥めるしかなかったのでした。
行の方も、いくぶん毒を吐き出したおかげか、自分を取り戻した様子でした。
顔を赤らめて、
「まあ、何もなかったら、いつも通りですよ。――行きましょう!」
さりげなく普段の調子で促します。
「ラジャ!」元気に応える蘭でした。
そうして、二人は秋田入りをしたのです。
――
さあ、この旅も――
残すところは、この秋田県と、青森県。
二県のみとなったのでした。




