8 五日目。山形・秋田(1)
旅の五日目。7月25日、木曜日。午前6時。
今日は早めの出発です。走行予定はラインにしておよそ112km。田沢湖を目指します。距離的には昨日と似たようなものなので、時間が読めます。出発を前倒しして、その分早く現地入りしようという作戦でした。
まず、国道13号で秋田県院内町まで。そこで一時的に分かれて、羽後町にて再び合流。
あとは、雄物川に沿って北上し、大仙市を経て、田沢湖に到着です。
このルートのいいところは、ほぼ全域が、行と蘭の“まっすぐライン”の間にある、という点でした。二人とも精神的に安心できるのなら、それに越したことありません。
ただ、宿泊地に限って言えば、行にとっては、東端に少し寄りすぎの感があります。ですが――そこはなんと言ってもです。蘭と同じ宿での、お泊まりの方が絶対いいに決まっているのです。
例によって行が先頭ポジションを、非常に率先して引き受けます。
さあ出発!
早朝の透明な空気をコン吉とともに切り裂きます。爽やか、今日も快晴、絶好調です。
「ねぇ知ってる?」
さっそく背中から蘭の声。
「なんでしょう?」
「昨日の神さまの話だけどさぁ」
「はい」
「やっぱり、一番遠い、“ココ”にいるんだよ」
「でも、いないですよ? どこにいると言うのです?」
クスリと笑む気配がしたのでした。
「神さまは、コオの背中に張り付いていらっしゃるのですよ」
「……なるほど。そう来たか。これは……困った(笑)」
「どうする?(笑)」
「ぼくの代わりに口きいてもらえませんかねー?」
「ウフフッ。コオの背中はどうですか? カッコいいでしょう」
「うわ、どこか意味深ですね? 期待を裏切らないようにしないと」
「神さまが張り付く気持ちが分かりそう」
(笑い)
「――せいぜい、汗臭い、と機嫌損ねないように気をつけますか」
「神さまの方だって汗をかくかもよ。なんたって夏だし」
「ラン――かまわないから、引っ剥がしてください。道理で、さっきから妙に暑苦しいと思ってたんです」
「アハハハハ!」
バカ話を続けながら、国道13号にON! 羽州街道を北上し始めたのでした。




